O Come, All Ye Faithful


 知名度という点では,全クリスマス・キャロル中,間違いなくトップ3に入る超有名曲で,日本でもクリスマス時分はデパートでもスーパーでもBGMとして毎日垂れ流し的にかけられている。ストリングス用の趣味の悪いアレンジにはうんざりしてしまうが,本来の合唱で聴くこのキャロルには,メロディーの美しさや盛り上がりの点でやはりすばらしいものがある。日本の賛美歌集では第111番「神の御子は今宵しも」として知られるが,同じ有名キャロルでも,「牧人ひつじを」などと比べると,讃美歌集の日本語訳は断然いい。ただ,日本のキリスト教会は,一般にこの曲をゆっくりとした遅いテンポで歌いすぎる傾向があるようだ。英国の合唱団のように,きびきびとした早めのテンポでこの曲を歌う方が私は好きだ。
 この有名なキャロルを作曲したのは,John Francis Wade(1710-1786)という英国人であったと言われるが,確実なことではない。そもそもこのWadeが英国生まれであったかどうかも100%確実なことではないらしい(没したのがフランスなのは確からしいのだが)。素性も経歴もはっきりしないWadeは,この曲ただ一曲を残したおかげで歴史上に名前をとどめている。歌詞の方は,1751年のラテン語の聖歌"Adeste fidelis"が元になっており,ラテン語のままでもよく歌われる。一説では,クリスマスに行われる真夜中のミサに向かう聖職者の行列で歌われたとも伝えられる。これが英訳されたのは大分後のことで,英国シュールズベリー生まれのFrederick Oakeley(1802-1880)が1841年に大部分を英訳したが,第4節と第5節の訳はWilliam Thomas Brooke(1848-1917)によると言われている。