白鹿亭の跡地に立つ建物の壁にある記念プレート
そんな訳で,松村先生がこのジーンに会いに来てくださり,楽しいひと時を持つことが出来たのだ。そして,ジーンからは山のようにピックウィック家の資料をコピーさせていただいた。しかしながら,バースのピックウィック家もジーンとそのお兄さんで終わりということだ。もちろん彼女には子供は無いし,お兄さんにも娘しかないということである。ちなみにこのジーンの姪はギリシャ人と結婚しギリシャに住んでいる。こちらの方でも,子供のバイリンガルの難しさをよく話したものである。
ジーンと松村先生(ジーン宅で)
Jeanとの別れ
ジーンとのお別れは本当に悲しくつらいものだった。日本の中でもよく友人の引越しは寂しいが,海を隔てて飛行機で13時間。その距離を考えると,もう二度と会えないのではないかと思い,本当に悲しい。 日本人同士なら決してしないが何度も何度も抱きあってさよならをした。彼女も寂しさを紛らわすようにくしゃくしゃのハンカチを出して何度も何度も涙をぬぐっていた。彼女は75歳。まあ,彼女のお母さんは99歳まで元気だったのだから!また会えるよ!といつも家族で話している。
ジーンとのお別れの日(ジーンの庭で)
ピックウィック・ペーパーズを楽しもう!
上でも触れたように,隣のPickwickさんの御先祖に関係アリの「ピックウィック・ペーパーズ」は,英国ヴィクトリア朝を代表する文豪ディケンズの人気を一躍高めた出世作である。善良なお人よしを絵に描いたような初老の紳士サミュエル・ピックウィック氏が三人の若い紳士と機転のきく好青年の召使サム・ウェラーを連れて英国各地を旅行し,行く先々で滑稽なドジを繰り返す。悪事を働いたわけでもないのに,ついには一時的とはいえ牢屋にまで入れられてしまうピックウィック氏。しかし,ストーリーに悲愴感は全く感じられず,終始ユーモアと揺るぎない人間への信頼が流れている。最後は善良なピックウィック氏にふさわしいハッピー・エンド。 ピックウィック・ペーパーズの手頃な邦訳としては,「ピクウィック倶楽部」の題でちくま文庫から出ていた(全3巻)が,残念ながら現在は絶版のようである。そのような淋しい出版状況下で,まさに待望といってよい,BBCが1985年に製作した長編ドラマがDVD化されて2000年12月に発売された(IVCF-271)。ディスク2枚で約5時間と長いドラマであるが,これでも原作があまりにも長大なためか,すべてのエピソードがドラマに入っているわけではなく,たとえば残念ながらピックウィック氏がバースに行く話は抜けている。しかしそれは小さなこと。原作自身のおもしろさ,ピックウィック氏のイメージにぴったりなナイジェル・ストックをはじめとする俳優陣の名演技,ヴィクトリア朝を的確に再現した時代考証,木管群で奏される楽しいテーマ曲など,ディケンズ好き,英文学好きの人なら一度見出すとやめられないことうけあいのおもしろさ!日本のディケンズ研究第一人者小池滋氏による作品解説や登場人物紹介の映像特典つき。 |