contents
  • 「慰安婦」問題についての韓国の反応─1997年1月
  • 韓国でいじめられる元「慰安婦」ハルモニたち
  • 挺対協、尹さんらが「いじめるハズがない」という「意見」


  • 《資料》

    1997年1月11日、アジア女性基金が「慰安婦」被害者たちに「償い金」などをとどける。
    ソウル市内のホテルで5人に、その日の内に2人に届けた。
     

    1997年1月13、14日韓国各紙報道 「韓国政府、社会にも責任」

    ○朝鮮日報 一方的支給、日本に謝罪要求の方針。解説─民間団体の奇襲支給、「日本にやられた」。韓国政府の対応、主権侵害、日本政府が解決しなければ妥結なし。強硬。
    ○東亜日報 摩擦拡散の兆し。新たな関係考慮し支給中断要求。日本、今回を契機に受け取り拡大を期待。解説─基金奇襲支給、遠ざかる賠償、日本政府の予算使いながらも法的責任、知らんぷり。一部犠牲者の生活苦を助けられなかった韓国政府、社会にも責任。
    ○中央 日本の挑発行為に強力対応、国際法上のすべての手段を動員することに。
    社説、政治大国にはるかに及ばない日本。
    ○韓国日報 外交摩擦に。15日の外相訪韓取消も。
    ○ハンギョレ新聞 社説─野卑な日本の慰安婦解決策。
    ○中央日報 解説─政府、日本に背信感。慰労金を支給した主体は日本の民間基金である。日本政府でないだけに外交攻勢で対応するには限界がある。したがって、国連人権委員会や国際司法裁判所、常設仲裁裁判所等の国際機構を積極的に活用し日本政府にぎゃふんといわせることが政府の腹のうちである。

    ○朝鮮日報 挺対協、憤怒。一部だまされてもらった。対応策を模索。「堂々と行えないような行為をしたことに対して憤怒している」との立場。
     尹貞玉(ユン・ジョンオク)挺対協共同代表は、「パク氏等一部が基金を受け取ったならば、日本の基金関係者たちの執拗な懐柔にだまされたためである」、「昨年末に国民基金200万円と日本政府が支給する医療・福祉費300万円をすべて現金で一時払いで支給するという噂をひろげて回ったことを勘案すれば、今回、慰労金200万円をもらったおばあさんたちは、その噂にだまされた可能性が高い」と明らかにした。
     しかし被害者のおばあさんたちに対するわれわれの誠意のなさを指摘する声もある。挺対協は…昨年10月に「市民連帯」を発足させ、20億ウォンを目標に募金を始めたが、小・中学生と一部の宗教人だけが参与しただけで、企業に無視され、これまでの募金額はわずか2億ウォンほどである。…被害者のおばあさんたちの生活苦は相変わらずであった。
     ユン・ミヒャン(尹美香)挺対協総務は、「市民連帯基金を、より活発に推進する等の具体策を探し出す」と語った。
    ○ハンギョレ 社説 …日本の二重的な態度に憤怒せざるを得ない。…事態がこんな状況にいたるまで放置したのは大きな外交的失策として批判されて当然だ。政府の強い反対立場の表明にかかわらず、日本が慰労金の支給を強行したのは、政府の外交に弱みがあったことを端的に示しているからである。

     ▼13、14日報道 受け取った人のインタビュー
    ○東亜日報13日 日政府予算包含にもかかわらず「法的責任ない」と逃げ。一部被害者生活苦「知らないふり」、わが政府、社会にも責任
     500万円を受け取ることにした金田君子(77歳)ハルモニは、月36万ウォン(国家25万、区庁8万、道事務所3万ウォン)を受け取っている。金田ハルモニは、「この金ではアパート賃借料と電気水道電話料金を出すのも難しい」と述べた。…「病院に入院した時も政府や団体のだれ一人電話一本もかけてこなかった」、「だが基金側の人々は一月に何度も訪ねてきた。その苦労が申しわけなく、受け取ることにした」と語った。4年前からごはんが食べられない。歯もなく消化機能も弱ったためである。あちこちが痛み、鎮痛剤がないと朝起きられない。アパート上の階の家内工場のため夕食もよくとれない。それで、500万円をもらえば、単独住宅をチョンセして、移る計画だと明らかにした。…国内の生存被害者は160名だ。かれらは、つぎつぎに死んでいっている。

    ○ソウル新聞14日 受け取った元「従軍慰安婦」インタビュー
     「いつ死ぬかも知れない状況が迫っている私としては、仕方ない選択でした」。李副禮氏は、最近、日本の民間団体から500万円を受け取ることにした経緯について淡々とした語調で説明した。日本の自民党政府は、…謝罪しておらず、今後も行わないようであり、基金側の今回の提案を受け入れた、と付け加えた。「同団体が数年間われわれのために基金を集め、真の謝罪を示してきたが、われわれが北海道を5回にわたり日本に謝罪を要求したとき、韓国大使館側からはただの一度の慰労の言葉もなかった、と韓国政府の「無誠意」を非難した。
    ○韓国日報 金君子氏は13日、電話でその際の状況を明らかにした。「日本全体をくれるといわれても、われわれが死んだあとでは何の意味があるのか。日本政府を相手とする国家補償は実現不可能であると思われる。韓国政府や民間団体が日本政府や国連を相手として国家補償を推進しても、100年戦っても日本政府は絶対賠償しないだろう」
    ○韓国日報 挺対協・市民連帯共同の記者会見で 沈美子さんは、「慰労金という言葉はいいが、売春代をあげるというのと同じじゃないか。獣のように引きずり回された歳月もやりきれないのに、今になって責任を回避し、苦境に瀕しているおばあさんたちを若干の金でまたも買収した、と怒りを吐露した。

     ▼15日報道 柳宗夏外務部長官「日本政府に責任」発言の意味
    ○東亜日報 解説 外務部の当局者は政策変更ではないと述べている。…「これまで間接話法で要求してきた個人賠償を、今回、柳長官が直接話法で表現しただけ」と説明している。
     柳長官の発言はとくに、「日本に物質的補償を要求しない」という金泳三大統領による93年の発言と異なるものではないかという疑問が日本側から出ている。これについて外務部の当局者は、「大統領の発言は、国家対国家の補償を要求しないという意味であった」とし、「大統領が個人賠償まで要求しない意思を明らかにしたことはない」と説明した。
     また、請求権交渉の当時には、「慰安婦」問題が浮上しておらず、その後登場したので、柳長官の発言は請求権協定に対する新しい解釈であると見れなくもないと、外務部当局者は述べた。

     ▼17日報道 韓国政府が事前通告の事実認める
    ○東亜 16日、日本政府は支給事業の中止は困難だとの立場を明らかにした。(与謝野官房副長官)「事前に通告されなかった」との韓国政府の主張に対して、「事前に外交ルートを通じて通告した」と反駁した。
     韓国外務部当局者は「去る10日、日本政府から基金側が一時金を近々支給する予定である、との通告を受けていた」旨、明らかにした。
    ○韓国日報 日本外務省が、基金が(の)支給につき、韓国側に外交経路を通じて事前通報した事実が明らかになった。加藤良三外務省アジア局長は参議院決算委員会において、「韓国人被害者のたちの要請により、基金側が支給せざるを得ない状況にある旨事前に外交経路を通じて韓国外務部に伝えた」と述べた。
     駐日韓国大使館側も、「通告時点がいつで、いかなる外交経路であったかは明らかにできないが、事前通告があったのは事実である」と認めた。これは、11日に山下新太郎駐韓大使が慰労金支給を事後に通報してきたとの韓国外務部の説明とは異なり、事前に日本外務省から通告を受けたにもかかわらず慰労金支給を黙認した可能性を示唆するものである。
    17日 日本の一部新聞が「基金事業実施手続き凍結」報道(*基金はただちにこれを否定)

     ▼21日 挺対協弁明
    ○朝鮮日報 14日、日本の民間団体から500万円を受け取ることを決定し注目を集めたある「従軍慰安婦」被害者(77歳)のインタビュー記事が報じられた後、挺対協には「なぜハルモニたちのために募金した支援金が伝達されなかったのか」との批判の抗議電話が市民から相次いだ。毎日10名あまりから送られてきていた支援金もほとんど中断した状態である。1990年に挺対協が発足して初めての試練である。
     尹美香(ユン・ミヒャン)挺対協総務は、報道内容は事実でないと説明。…一部被害者たちが韓国政府からの支援金を中断せよと主張したが、これは挺対協の公式立場ではないとの説明である。
     1月中旬までに募金された金額は2億ウォン程度である。…目標額の30億ウォンにはあまりに不足している。ユン総務は、「何年も交通費に過ぎない月給をもらって被害者たちのために尽くしてきたのに、批判を受けるとは…。日本側がねらっているのは、まさに金銭で挺対協と被害者たちを引き離すことではないか」と述べた。


     

    韓国でいじめられる元「慰安婦」ハルモニたち
     

     1997年1月から韓国国内で、元「慰安婦」たちがいじめにあっている。運動が反対しているアジア女性基金を受けたという理由で差別されている。ハルモニ(おばあさん)たちはおびえ、一時、住まいを移した人もいた。
     運動団体とその周辺から、電話で、住居に押しかけて、集会で、つめたくののしられ脅された。
    運動として「アジア女性基金」に反対、だから「基金」を受け取ったら「民族の自尊心を売り渡した、汚いおんな」といじめる。そのことが正義とされる。
     共同通信社の記事がそれを伝えている。いまも記事の7人は、運動体の支援の対象でもなく、社会的に「ネグレクト」(無視する)されている。
    (挺対協の「ニュース」が、かれらには政府支給の毎月の支援金を打ち切れと他のハルモニが政府に申し入れた、と書いている。そうした行動を事実上、この団体が後押ししたと受け取れる。)
     実際に98年5月に韓国政府が支給した元「慰安婦」への支援金も、アジア女性基金を受け取った人たちは対象から外され、差別されている。

    「いじめるハズがない」という「意見」


     

    受け取り7人に深い心の傷、批判浴びて韓国元慰安婦
    [共同通信 1997年6月20日配信]

     日本の「女性のためのアジア平和国民基金」(アジア女性基金、原文兵衛理事長)による元従軍慰安婦への償いの事業で、韓国の元慰安婦七人が今年一月に一時金を受け取ったことに対し、国家賠償を求めて民間基金は受け取るべきではないとする韓国内の支援団体やマスコミが猛反発、七人は厳しい批判にさらされ続け、心に深い傷を受けている。
     追い打ちをかけるように、最近、元慰安婦支援のために行われた市民運動の募金で、七人だけが対象者から外された。七人は「同じ被害者なのに」と不当性を訴えている。
     一方では、七人に続いて一時金の受け取り希望の意向を漏らす被害者が出るなど新しい動きも出ている。
     韓国では七人が一時金を受け取ると、受け取りを拒否している一部の被害者が韓国政府に対し、七人には政府の生活費支援(月五十万ウォン=約六万四千円)を中止するよう求めた。さすがに、これには韓国政府が「そういうことはできない」と回答したが、七人への風当たりは想像を超える厳しいものだった。
     韓国では昨年十月に約四十の市民運動団体が「日本軍慰安婦問題の正しい解決のため市民連帯」を結成、基金の一時金と同額を被害者に支援するため三十億ウォン(約四億円)を目標に募金活動を行った。しかし集まった募金総額は約五億五千万ウォンにとどまった。
     市民連帯では、募金は百五十一人の元慰安婦と中国から帰国の元慰安婦四人の合計百五十五人に一人当たり約三百五十万ウォン(約四十八万円)を支払う予定だ。しかし、基金から一時金二百万円と医療・福祉事業費三百万円の計五百万円を受け取った七人には募金の配分をしない方針だ。
     七人の一人、金田きみ子さん(75)=仮名=は「同じ苦しみを受けた元慰安婦なのに、なぜ差別されなければいけないのだ」と怒りをぶつける。
     また別の老女(75)は「一時金をもらった時、市民運動をやっている人や記者が押し掛けてきて「なぜ汚い金を受け取るのか」と責められた。しかし、年老いて身寄りもなく、世話をしてくれる人もいない私が、基金を受け取ることがそんなに悪いことなのか」と嘆く。
     アジア女性基金の呼びかけ人の一人、和田春樹東大教授は「七人が民族の自尊心を傷つけた存在として扱われるのは深刻な事態だ」とし、韓国の関係者に手紙を送り、七人にも募金を配るよう訴えた。
     被害者の中には、市民連帯の募金を受け取った後に、基金の一時金を受け取ろうという動きも出ている。支援団体の一つ、韓国挺身隊問題対策協議会では「募金に加え、基金を受け取る人が出ればどうするか、議論の対象にはなったが、これという結論は出ていない」と言う。
     元慰安婦の大半は七十歳以上の高齢で身寄りがない。一時金を受け取った七人も同じ境遇だが、支援団体とのあつれきと不信は深まるばかりだ。(平井久志・ソウル共同記者)
     


     

    「挺対協がいじめるハズがない」

    座談会「女性史と『慰安婦』問題」──藤目ゆき、鈴木裕子、加納実紀代(司会)
    『インパクション-107』1998.4.10、インパクト出版会

    藤目ゆき、鈴木裕子氏がアジア女性基金反対の立場で発言(国民基金と呼称)。
    *以下は引用であり、報道、公刊されたものを出所を明示し、資料として一部転載させてもらった。


    藤目/どうしてですか。国民基金で自分の尊厳が回復されて満足だという人とか、国民基金への募金をきっかけに侵略の歴史について初めてなにか考える人が出て来る、とか、そういうことは当然個別的にはありうるでしょう。けれどそういうのは全体的な構造の中の部分であって、それをもって国民基金を評価することにはならないでしょう。私は廃娼運動のパラダイム批判をしてきたわけですが、あの運動だってその結果の売春防止法だって、個々の活動や個々のケースのなかにはブラスに評価できるものはたくさんありますよ。そういう個々の現象だけをとりあげて廃娼運動や売春防止法はけっこうなものだ、と評価することができるか。部分としていくら善をふくんでいたって、総体としてその本質が善だと言うことにはならないですよ。混同しておられるように思えます、個人の選択の権利ということをめぐっても。
     「当事者じゃないまわりの人間がこれでは尊厳の回復にならないとか屈服させられたとかいうのは傲慢だ」とおっしゃいましたが、受け取るか受け取らないかを決めるのは当人であるべきだというのは当然だし、受け取ることにした人たちを非難しようとも思いませんよ。支援団体もそうでしょう。私たちが非難しているのは国民基金に対してであって、彼女たちに対してじゃないんですから。屈服うんぬんというのも、くりかえしになりますが、構造としてそうなんであって、屈服だと言うか言わないかの問題ではないでしょう。それを混同されては心外です。
     国民基金派の人たちのこのごろの支援団体バッシングのやり方はずいぶんひどいと思いますよ。国民基金に反対する支援団体が受け取るおばあさんたちを非難したり差別したりしているために彼女たちが肩身の狭い思いをしている、みたいなデマゴギーね、和田春樹さんも『SAPIO』とかに書かれていますが。支援団体が国民基金を批判していることを、まるでおばあさんたちを非難していることであるかのようにすりかえてる。国民基金がお金を受け取った人たちの苦しい立場を二重に利用しているということでしょう。それって経済力で人の尊厳を踏みにじることではないですか。

    鈴木/それと、国民基金がいかに深刻な亀裂と分断と混乱を生じさせているかというその現実の問題を抜きにこの問題を語れないんですよ。

    加納/橋本首相のおわびの手紙はインチキ極まりない、本気で謝罪するはずがないけれども、フィリピンと韓国の側でこの問題の受け止め方がややちがっているようですね。それは手紙の翻訳の問題もあるのではないかと思ったんです。このあいだ「ナヌムの家 2」の試写会があって、そのときナヌムのハルモニたちがあいさつされましたが、橋本の手紙はおわびであって謝罪ではないという言い方をしているんですね。おわびと謝罪というのは韓国語でどういう使い分けをしているのか。

    藤目/翻訳の問題ではないでしょう。尹さんがあの手紙を謝罪じゃないとおっしゃるのは国家補償ぬきの謝罪なんて口先だけのインチキだという主旨でしょう。加納さんは前の『インパクション』で尹さんの態度が疑問だと書いておられますよね、和田春樹さんと同じように。いったいご自分の素朴な疑問の解決に役立てるために書かれたんでしょうか。だったら何故尹さんに直接尋ねないんですか。ああいうかたちで書いてしまうと、結局どういう効果を持つかといえば、やはり尹さんという人はどうやら視野が狭くって、謝罪である文言すら歪めて読むような人だという印象を読者に与えるだけではないですか。

    加納/私は昨年秋の『世界』や『論座』での尹さんの発言はそう思いました。これまではそうじゃない、尹さんはナショナリズムを越える視点を開いた人と思っていましたが、あの文章の尹さんの発言はよく分からなくなってきています。

    鈴木/そうじゃないですよ。日本側に大きな責任があるんですよ。多分に和田さんや高崎宗司さん、臼杵敬子さんたちの歪曲に原因がありますよ。挺対脇の尹貞玉さんや挺対協が被害者ハルモニに対して、彼ら、彼女らが言うような苛めなんかどうしてやれますか。挺対脇は彼女たちをサポートするためにできた会なんですからそんなことはありえないしそれは何年たったって同じですよ。国民基金を受けとらせたいために相手の支援団体のリーダーや活動家を叩くというやり方は卑劣ですよ。それから詫び状ですけど、国民から金を出させておいて、首相が詫び状だけを出すなんてそもそもおかしいでしょ。

    藤目/補償をしないで詫び状を出すという偽善を批判しているのに、それがマイ・フィーリングという言葉だけに尹さんがこだわっているかのように歪めた言い方をするのは、汚いやり方ですよ。

    鈴木/私は、和田さんや高崎さん、よく知ってますよ。本当はこんなことを言いたくはない。だけどやっぱり彼らはこの問題を通して、市民の立場から国家(権力)の立場へと、あえて言いますが、転向したと思うんです。最初はたしかに善意だったと思います。しかし、次第に国民基金の「推進」を自己目的化し、どんどん吸い寄せられていって、最終的には相手を叩くことに血道をあげている。そんな今のやり方、それを許していいのでしょうか。
     
     
     

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    アジア女性基金を受け取ったおばあさんを非難、差別しているというのはデマ─藤目氏
    挺対協はサポート団体だからいじめなどするハズがない─鈴木氏

    どんな事実の提示もないし、反証もないし、挺対協、尹共同代表に事実の有無を「質問」した形跡もない。
    被害当事者じしんの発言、報道があるのだ。
    なぜ尹さんらに直接尋ねないんですか」(藤目氏発言)とお返しをしたい。

    実態、事実を提示していることに対して「支援団体バッシング」としか受け止めない。(すりかえであり、正しい運動に何をいうかという独善の立場)
    デマかどうか、ハズがないかどうか、情報も確認もとらずに「意見」をいうことこそ、デマ(うそ)の典型だろう。
    大学の教員であり、女性運動に関わりフェミニズム・女性史家と称される人たちが、どうしてこのような発言ができるのか。はずがない、などという思考と態度で学問をやっているのだろうか。(挺対協・尹氏は元「慰安婦」を支援、元「慰安婦」支援は善、だからいじめなどするはずがない、そして事実をデマという決めつけ。立派!)

    挺対協、共同代表の尹貞玉氏らは、以下のことを、常識として受け入れるべきではないのか。

    ○アジア女性基金を受け取る・受け取らないの決定をするのは、被害者自身であること、
    ○挺対協は、アジア女性基金を受け取れば「自ら進んで行った売春婦となる」、「民族の自尊心を(日本に)売り渡したことになる」といって被害当事者を拘束したり、非難しないこと、
    ○挺対協は、運動団体としてどのような運動方針(公式謝罪、個人賠償など)をとったとしても、一切それを被害当事者に強制しないこと(やめること)

    鈴木、藤目両氏も、この常識を確認し、挺対協・尹代表にもいってもらいたい。

    事実提示もせずに他を非難するのは止め、自らの責任によって被害当事者に、いつ、どのような「答え」(謝罪、補償など)を出すのか、「運動」プログラムを実践し、いつまでにできなければ責任を取るというくらいの姿勢をもってほしい。

    構造だとか全体だとかの論ばかりで、正しく「主張する、裁判で訴える」以外、かれらは提起していないように思う。これまでどんな判決が出ているか、政府・国会で補償の動きは進んでいるか、政治・社会の条件はどうか、なによりも被害者自身が何を望み、現実に健康や生活がどのような状態か──を、つぶさに、足と想像力を駆使して、きびしく見聞きしてもらいたい。それが初歩の初歩。
    国家レベルで残してきた問題ではあるが、そこに生きた人々がいる。いま私たち一人ひとりが「個人」─人間に対する答えを出すために、自己責任でどれほどのことができるかの課題になっていることを自覚してもらいたいもの。
     

    *挺対協、尹貞玉共同代表らの実際の言動は、報道、資料その他を使い、このページの前段のほか、別項にも掲示している(リンク)。間違いなら、両氏は、報道機関等に反証すべきだろう。
    *被害者自身の実態の訴え、被害者の声を見聞きしないで、「慰安婦」問題を扱い、論じているだけ。研究や議論は否定しない。しかし知らないこと、検証していないことを事実であるかのように、また、ひろく被害者を代弁し被害者の意思かのようにいうべきではない。事実と人をバカにしていると、それによってシッペイ返しをくうことになる。
     
     

    「慰安婦」問題についての韓国の反応──ドキュメント1997.1.12〜1.21

      1997年1月11日、アジア女性基金が韓国の元「慰安婦」たちに「償い金」などをとどけた。
      そこで起きた韓国での現象─
     

     彼女たちにいま何をすべきか、できるのか。
    「慰安婦」問題は、日本政府・韓国政府/アジア女性基金・被害者たち/政治情勢、マスコミ(世論)の関係の中にある。
    「問題」より何より、生きた元「慰安婦」被害者を中心にしなければ、見誤る。

          国民 …「慰安婦」被害者────アジア女性基金 … 国民

     社会 … メディア・運動 |         | メディア・運動 … 社会

                韓国政府──────日本政府

    「慰安婦」被害者には、1995年設立の財団法人女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)から、「償い金」などが届けられている。
     韓国では1997年1月から実施に入った。すぐに韓国マスコミ、韓国政府、挺身隊問題対策協議会(挺対協)、そして「慰安婦」被害者たちからさまざまな反応がわきおこった。「日本の奇襲」との報道が1週間つづいた。

     その後の状況はどうなっているか。
    「基金」は動きにくい立場を強いられている。発端は98年5月。韓国政府が「慰安婦」被害者たちに「支援金」という一時金(約300万円相当)を支給して、政府としては「慰安婦」問題は終わった、とした。女性基金はもう韓国については「動くな」との立場をとっている。韓国政府としては、日本に個人賠償を求めない、自らカネを支給して一方的に終結させたのだ、という。(賠償要求する民間運動には介入しない立場。)

     改めて実施当時の反応から、なぜ現在のような状態に入ったのかを、たどってみる。被害者たちにとってよい方向の打開する道はあるのかの視点から。
    「韓国でひとりでも『基金』をもらう人がありますか」と、政府の一部と運動団体はいっていた。
     だが足下から被害者たちが動き、「基金」に申請し、受け取った。そんないきさつもあって、起こった事態への韓国の反応は複雑だった。反発、抗議─韓国政府の弱腰、社会の対応が十分だったかという「反省」自問─しかし対日強硬姿勢を政府も運動もくずせない。
     運動体は、自前の募金にのりだしたのだが「基金」に対抗するには不足だった。そこで政府に働きかけ、政府も支援金を出すことを決め「基金」に対し防波堤とすることで双方一致する。98年中に政府は「カネの手当て」をし「過去問題は終わった」と一方的幕引きをしてしまう。日本に対して優位に立つという特異なナショナリズムで一致するのは早いが、矛盾もふき出す。政府と運動は、個人賠償をめぐって同床異夢。それを隠そうにも隠せない。ほんとうにこまるのは、被害者個人、一人ひとりなのだ。


    トップ挺対協韓国マスコミ解決とは被害者の声裁判判決