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- 椎名和夫 : Programming, orchestration
- 岡沢章 : bs
- 土方隆行 : gtr
- 難波弘之 : kbds
- 中西康晴 : kbds
- 浜口茂外也 : perc
- 渕野繁雄 : sax, horn arrangement
track 2 の合唱隊は、岡沢章, 土方隆行, 難波弘之, 中西康晴, 沼澤尚, IWASAKI Hiromi (岩崎宏美?), TSUCHIDA Yishinori, SAKASHITA Taketomo (土方隆行のアシスタント), 椎名和夫
いきなりヘヴィなリズムで幕を開け、壁コーラスが襲いかかるタイトル曲 Key でスタート。 Dark Crystal, 1989. 以来、ドラムスは打ち込みだが、毎度のことながら、このヘヴィネスさは……。ベースとユニゾンのバスドラおよびパーカスが小節を埋め尽くしている。大雑把に言って、曲傾向は静 (アレグロ・モデラートで揺れている感じ) と動 (蠢めく、這い回る、突進する) の二方向に分けられ、2. 3. 8. 9. 10. が前者、あとが後者ではないか。面白いのは Dark Crystal, 1989. へのスタイルとしての類似が観られるところで、 Tricky Heaven はまるで Heat Wave だし、 Heart to Heart は、 Nosferatu である。 Light'n Up, 1982. 所収の Alcoholler の続編 Hiphopneohippie - Dumb - Damn - Town -- Continued from Alcoholler はズドンとふてぶてしい曲調で、その奥底で、ムーグ・ベース (?) とサックスが蠢めく。 Trickey Heaven は、壁コーラスと這い回るベース、ドラムス、ディストーション・ギターが一体となって突進する曲で、推進力は抜群。 Heart to Heart は独特のシニカルな視線の歌詞に載せた曲で、タイトなリズムとブラスが愉快。個人的にいちばん気に入っている Corner は、沼澤尚を彷彿とさせるリズムも圧巻だが、夕暮れの街角のスナップショットがそのまま曲になったような憂鬱なコード・シーケンスが素晴らしい。点描風のコーラスもせつない。この曲に関しては、別役実の感想が聞いてみたい。押井守の『紅い眼鏡』の彷徨シーンのバックに流れていてもおかしくない。 月明かりの中庭 は、なんということはないバラードなのだが、 Light'n Up, 1982. の 頬に夜の灯 と同様、サビに強烈な吸引力が仕込まれている。要注意。 Miracle Ship はプログレである。突如激昂するコーラスに驚く。 Mr. TODA Yuzo (1961 - 1996) に捧げられた 12 月の Illumination は Extreme Beauty, 1995. の 精霊の降りる街 直系の三連のバラードである。 Music Magazine, 1996 年 11 月号, (ミュージック・マガジン) のレビューで安斎明定氏は、この曲を『『Bells』に収録されていた『Thanks to you』 (超名曲 !) の続編のようなこの曲』と書かれているが、 (超名曲 !) というのに文句はないが、以降は明らかに違うと思われる。この曲は逝ける人を悼む歌であるのに対し、あちらはもっと private な曲である。
シングルを聴いたときにも思ったのだが、本作は明らかに Extreme Beauty, 1995. の系列に属する。もっと言えば、 Extreme Beauty から Dark Crystal, Gazer を経由して Bells, 1986. へ至る方向に存る。 Adlib (スイングジャーナル社) 1996 年 11 月号のロング・インタビューで河地依子氏は『まぎれもなく、吉田美奈子は (天) 空から降りて来た。』と書かれているが、これにはピンとこなくて、なんぢゃろかと思っていたのだが、本人曰く『かしこまったドームの中ではなくて、生の荒れた感じが出ればいいなと思ったんですよ』。これなら判るぞ。河地依子氏は Dark Crystal, を評して『聴いていて辛い』、『怒っているんじゃないかと思うほど、トンがった作品』と言っているが、私見では、これや Gazer ほど、カッチョ佳く、痛快で、聴いていて気持ちの佳い作品はあまりないと思うのだが、どうだろう。
聴いていていちばん気になった点。録音のせいか、声質が変わったような気がする。鼻音が強い。
なぜだか判らないが、 CD のプラケースの厚みがじゃっかん大きい。前作 Extreme Beauty, 1995 が 10mm だったのに、こちらは 12mm ある。観ただけで「あ、ちょっと厚いな」と判る。