Seiji at PTNA PIANO STEP in AUTUMN 2009



 春(3月)のPTNA STEP(ピティナ・ピアノ・ステップ)に続き,秋の大阪で開催されたSTEPにせいじが出演した。前回も書いたが,PTNAとは,(社)全日本ピアノ指導者協会(PTNA)の略称で,全国各地の各エリアで細かく分かれた地区でSTEPという催し物が開催されており、就学前の子どもから大人に至るまで非常に多くの人が参加する。STEPとはどういうものかについて興味をお持ちの方は,春のSTEPのときに書いた紹介をご参照ください。前回書かなかったことだが,STEPには「課題曲」を弾く「23ステップ(レパートリー or 教則本1曲+自由曲1曲)」の他に,「自由曲」のみを弾く「フリーステップ」という参加の仕方があり,今回せいじが参加したのも前回の「23ステップ」ではなく「フリーステップ」である。
 今回フリーでエントリーしたのは,
 
1.ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ 第5番 「春」 より第1楽章
 2.ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 第8番 「悲愴」 より第1楽章
 
の2曲である。2曲目の「悲愴」ソナタの1楽章は,このステップより約1ヶ月後のピアノ教室発表会で演奏する前のリハーサル的意味を含んでいた。発表会で,聴衆(というより観客?)の前で難しい「悲愴」を弾くのはせいじにとっても相当なプレッシャーであり,「発表会の前に一度,人前で弾いて慣れておいた方がよい」というピアノの先生からいただいたアドバイスもあった。1曲目のスプリング・ソナタは,どうせデュオで出るなら2曲ともベートーヴェンにしようというプログラムの統一性を考えたことも理由の一つであるが,この曲をやりたいという私の個人的「希望」の方がむしろ強かったというのが正直なところである。
 結果を先に言うと,このステップで2曲目にせいじが弾いた「悲愴」は,緊張もあってか,暴走の上に途中で止まるという,さんざんな出来に終わり,人前で弾く”怖さ”をせいじは嫌というほど感じさせられたのである(とてもYouTubeにはあげられません)。しかし,せいじ本人にとってこれは非常によい教訓,経験になったらしく,浮き彫りになった課題に改めて取り組んだ結果,発表会での演奏はずっと出来がよく,このときのステップに”感謝”することとなった。やはり,人前で弾くことはいろいろな意味で「勉強」になる。
 さて,本稿の本題はせいじの弾いた「悲愴」の方ではなくて,ステップの1曲目に演奏したスプリング・ソナタの1楽章なので,そちらに話を移そう。この曲をステップで演奏することで,私にとってもようやく一区切りの時を迎えられた気がする。初めて二人で合わせてから半年以上この曲を引きずっていたこともあったので…。最近息子とモーツァルトやベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを色々合わせられるようになってきたのは,中年を迎えた私にとって嬉しい誤算(あと2,3年で私の方が相手にされなくなるかもしれないが)。
 昨年のピアノ教室の発表会では,ドヴォルザークのソナチネをせいじと合わせたが,あのときはせいじは自分のピアノパートを弾くのに手一杯でヴァイオリンを聴く余裕が全くなかった。今は,アンサンブルにも慣れてきて,ヴァイオリンを聴く余裕も出てきたが,それにしてもドヴォルザークのソナチネのピアノパートよりスプリング・ソナタのピアノ・パートははるかに難しく,むしろヴァイオリン・パートより技術的難所は多い。ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタは本来「ヴァイオリンのオブリガート付きのピアノ・ソナタ」であり,ピアノがメインなのである。若いころはピアノの名人で鳴らしたベートーヴェンのことであるから,当然ピアノ・パートには華麗で難しいパッセージが多く出てくる。同じベートーヴェンのピアノ・ソナタと同じくらい「気合い」を入れて取りかからないと,ものにならない。
 本番は,フルコンサート・グランドの蓋を全開した状態で合わせたため,完全にヴァイオリンがピアノに負けていた。そのうえ,ビデオ撮影で失敗し二人の姿がちゃんと取れていなかった(泣)。 したがって,YouTubeの映像は前日の「自宅リハ」時のものです。
 このページの上に載せたCDは,私が「春」の演奏で最も好きなシェリング(Vn)とへブラ―(Pf)のもの。シェリングの「鈴が鳴るよう」と評された美音としなやかなフレージングで「春」冒頭の主題を弾けたら…と何度思ったことだろう。




(2009.11.22)