英語の子供の本は楽しい!


英語の教科書はおもしろい!
オックスフォード・リーディング・ツリー(ORT)

 オックスフォード・リーディング・ツリーは膨大な量のいわばイギリスの国語の教科書である。イギリスでの小学校一年生(4歳)からハイスクール(15歳)までをカバーする。メインストーリとして約120冊,サイドリーディングとして約50冊,さらにポエトリーとして約60冊。本だけではなく,関連したゲーム,ビデオ,カセットテープ,CD,CD-ROMもそろっており,大変充実した内容である。
 イギリスでは,これらの本が
学校という現場で,教科書としてだけではなく,絵本としても,またゲーム,クイズとしても使われている。また,一冊あたりが子供の成長に合わせて,適当な量にしてある。例えばStage 1のテキストは一冊あたり6ページ。12冊のうち最初の6冊は全く文字が無く,絵だけで理解できるし,授業で先生が内容を面白おかしくお話してくださる。また,文字が出てくるようになっても,最初のうちは,子供達が教室で習う手書きのアルファベットを使ってある。
 Stage1,2ではメインの主人公はKipperという5歳のいたずら好きで元気な男の子。Stage3,4になるとKipperの双子の兄姉ChipとBiffが主人公になる。話題は学校での出来事,様々なイベント,遊び。他の登場人物は,ちょっとドジでいたずら好きなお父さん,すぐ怒るお母さん。さらにBiffとChipの友達とその家族,学校のMay先生。そうそうKipper一家の超ひょうきんばあさんGranもいい味を出している。これらの人物が登場するメインストーリーに加えて,イスラムの子供達が登場するサブストーリーも大変面白い。また,絵がとても楽しく,何度も登場するが誰かは分からない赤い帽子をかぶった牛乳ビンの底のような眼鏡をかけたひげのおじさん,Kipper一家の隣のいつも一家を塀越しに覗いているおじさん(一度はトバッチリを受けてずぶぬれになった)。これらのキャラクターを探しても面白い。Stage 4になると一家は引越しし,魔法のドールハウスと,魔法の鍵を見つけ様々な冒険をする。いたずら好きのGranと悪い魔女の住むお城へ行ったり,ドラゴンをやっつけたり,大人でも楽しめる。
 ところで,登場人物は日本の教科書のように,「太郎君」,「花子さん」ではない。KipperはChristopher,ChipはDavid, BiffはBarbaraなのである。これは幼いKipperが自分のだけでなくみんなの名前をちゃんと発音できないためだとか。 この名前だけとっても,なんだか楽しいお話でしょう?
 また,Stage1からStage 9まで(はっきり分からないが)はこれらの主人公が続けて登場するようで,次はどんな楽しいお話があるのだろう,子供の興味は尽きることがない。我が家の息子達も,英語は多少分からなくっても,私のところにその日の気分に応じて読んでくれとせがむ。十分絵からの情報で理解でき,そのユーモアに大笑いするのである。親としても一回に読む量が10ページ程度なので,子供の要求に応じて何冊も呼んでやることができる。英語を上達させるにはそれなりに注意して,単語をピックアップして教える必要があるかもしれないが,読むだけで十分英語の雰囲気は伝えられると思う。また,テキストに書かれている文だけでなく,関連したお話を語ってくれるカセットテープもあるようなので,ご自分の発音に自信のない方でも使えると思う。ただ,難点はティチャーズ・ガイドである。有益なのだが,すべて英語なので結構大変である。また,英語を教えておられる方には塗り絵や小テスト,パズル,クイズの別冊もあり,こちらの方はコピーが許されているので,活用するつもりならば十二分に威力を発揮するだろう。


英語で物語を読もう!
Dr. Seuss's Book of Bedtime Stories
(Collins)£14.99

 この本の著者Theodor Seuss Geiselは,英国では本名よりももっぱらDr. Seussの名前でよく知られているらしい。50年以上の創作活動で40冊以上の本を出している大物児童書作家である。本書は,"Dr. Seuss's Sleep Book","Thidwick the Big-Hearted Moose","Horton Hears a Who!"という彼の人気作品が3つ一緒に収められている大型本である。"Dr. Seuss's Sleep Book"は,あくびが次から次へと「伝染」して,最後はあらゆる生き物がすべて寝てしまうというとてもユーモラスなストーリー。寝るのを渋る子どもにうってつけの本。"Thidwick the Big-Hearted Moose"は,枝角に他の動物をたくさんぶら下げて歩いていたオオシカのThidwickはある日ハンターに追われるハメに…。絶体絶命のピンチになったところで出る起死回生の脱出法がすごくおかしい。"Horton Hears a Who!"は,気の優しい象のHortonが主人公。ある日目に見えないほど小さい生き物たちの国をクロバーの上に載せて助けてあげるが,彼の動物仲間には理解してもらえず,いろいろと意地悪される。でも,最後には素敵なハッピーエンドが待っていた。Dr. Seussのおはなしは,どれも奇想天外で,ちょっぴりスリルがあって,最後にはハッピーエンドが待っている。絵がまたお話にぴったり合ったとてもユーモラスなものなのだ。時代をこえて英国の子どもたちに長く支持されてきたわけがわかるというものだ。


NURSERY RHYMES
Chosen by Ronne Randall, Illustrated by Peter Stevenson (Ladybird)£9.99

 今の日本が日本古来の童謡を子どもたちに教えることに熱心であるとは思えないが,英国の状況は日本とは大分違うようだ。実にたくさんのNURSERY RHYMES(日本では米国流に「マザーグース」と呼ばれることが多いが,英国ではもっぱら「ナーサリーライム」と呼ばれる)の本や録音が出ているし,小学校に入ると先生が遊びながら子どもたちに童謡を教える。英国の大手児童書出版社であるLadybirdが出しているこの本は,よく知られたナーサリーライムにとても楽しいイラストをつけた大型絵本。本屋で見て一目で気に入った。子どもは詞を読む前に,まずユーモラスなイラストを見て大笑い。親子で楽しめること間違いなしの本である。


Stories of Winnie-The-Pooh
A.A. Milne (St Micahel)

 日本でも昔から人気のあるミルンの
「クマのプーさん」シリーズの英語オリジナル版。これが大手スーパー,マークス・アンド・スペンサーのブランドSt Micahelから出版されているというのがおもしろい。原書を読んでみても,難しい単語や構文はほとんどなく,ほとんどが会話体でストーリーが進んでいく。だからこそ,自然な日本語に訳すのは非常に難しいだろうが,日本の子どもたちに英語のまま読み聞かせるおはなしとしては,大変ふさわしいのではないだろうか。この本には,「クマのプーさん」以外にもミルンの詩がいくつか収められている。「クマのプーさん」と同じくシェパードが味のある挿絵をつけている。ミルンの詩を邦訳版で見た記憶はないが,こちらの方も子ども向きの楽しいものである。ちなみに絵については,印刷のせいか日本版とは色合いがかなり異なっている。


The Tempest
Jennifer Mulherin (Cherrytree Books)£7.99

 シェイクスピアの本家本元だけあって,英国では子ども向けのシェイクスピア本もいろいろ出ている。その中でこの"Shakespeare For Everyone"シリーズは出色の内容と思ったもの。全ページオールカラー,30ページほどの薄い本だが,内容はかなり本格的で,劇の背景,あらすじ,登場するキャラクターの紹介,難しい言葉の解説などを,分かりやすくコンパクトにまとめている。シェイクスピアの「原文」は囲み枠で示されており見やすい。日本にもこういうシリーズがあれば,子どもだけでなく,大人もシェイクスピアに気軽に入りやすいと思うのだが。私は大好きな"The Tempest"をまず買い,次に"Macbeth"を買ったが,見て読んで楽しめる内容なのはどちらも同じ。シリーズは他に「お気に召すまま」,「ハムレット」,「ロメオとジュリエット」など全14冊。本シリーズは,英国の"Today's Guide"で「もしあなたが学校でシェイクスピアにうんざりしたとしても,このシリーズが彼の劇を本当に読む気にさせてくれるでしょう。」と評された。裏を返せば本国英国においてさえ,シェイクスピアを楽しく読むことは子どもにとって簡単ではないということだ。日本でいえば,入試のためにしか勉強しない古文を読んでいるようなものだから,それも当然といえば当然だろう。"Shakespeare For Everyone"シリーズには,「すべての人にシェイクスピアを!」という作者の願いが込められている。


ぞうのエルマー
David McKee, (Red Fox)£4.50

 David McKeeのELMERは日本でもおなじみの名作である。灰色をした象の群れの中で一頭だけ違うElmerはいたずら好きで,元気で人気者である。しかし,他の象と違うことで彼は悩み,他の象と同じになろうと努力する。しかし,「違うってこと」は決して悪くない。自分の個性と他者の個性,お互いが認め合い受け入れあうこと。そんな素晴らしさを教えてくれる絵本である。
 小学校でもこの本を教科書として使っていた。長男が最初に覚えた英語の文は,

  Elmer was a patchwork elephant.

であるが,親としても彼の学校生活を心配していた頃,担任の女性の先生から「Kazushiは今日この文を読み,そして書きました。」というメッセージがあった思い出があるだけに,この本の内容とともに忘れられない本である。
 私の好きな部分として

  Elmer was different.
  Elmer was patchwork.
  Elmer was yellow.
      and orange
      and red
      and pink
      and purple
      and blue
      and green
      and black
      and white.
  Elmer was not elephant colour.

がある。このはではで象のElmerは木の実の汁で象の色になるが,見た目は象色でもやっぱりElmerはElmer。個性っていいものですね。
 さて,McKeeのElmerシリーズは他にもたくさん出版されている。雪の中でも大暴れするし,彼の従兄弟のWilburもお茶目な黒白柄の象である。どれをとっても,内容もさることながら,子供達の英語の勉強にもなるだろう。


英語のパズルは楽しい!
Usborne Young Puzzle Books
Susannah Leigh 文/Brenda Haw 絵 (Usbone Puzzle Adventure)各£4.99

Puzzle Island
Puzzle Town
Puzzle Farm
Puzzle Castle
Puzzle Planet
Puzzle Mountain
Puzzle Dungeon
Puzzle Jungle
Puzzle Train
Puzzle Ocean
Puzzle School
                Puzzle Holiday
 全くもって楽しくて面白いパズルブックである。似たような本は日本で見たことがない。最初のページに友人からの手紙があり,冒険が始まる。勇気ある主人公がそれぞれのページの絵の中に隠された様々なものを発見しながら進みます。迷路あり,間違い探しあり。さらにへんてこなものもいっぱい出てきます。それを探すのもとても楽しいらしく,何度も何度も飽きずに遊んでいます。またそれぞれの本に登場する主人公は,別のパズルブックでもチラッと登場しています。それを探すのも楽しいです。絵もすごくいいです。是非日本語訳して日本でも出版してほしいシリーズです。


Time train to Ancient Rome
Gaby Waters (Usbone Puzzle Adventure)£3.99
 コッツウォルズのサイレンスターにあるローマン博物館で購入した。パズル形式でローマ時代のことを遊びながら勉強できる。 このシリーズも前述のPuzzle Booksと同様たくさん出版されている。


汽車が出てくる本
Little Red Train to the Rescue
Benedict Blathwayt (Red Fox)£4.50
 赤い機関車の運転手Duffyの一日を描く。線路にたくさんの家畜たちがでてきたり,洪水になったり,大きな木が倒れて線路をふさいでいたり,雪で線路が埋もれていたり,大変な一日。次男のお気に入り。

Freddie on the Track
Freddie theTeddy
Audrey Tarrant (The Medici Society Ltd.)
 動物たちの絵がすごくかわいい。ぬいぐるみのクマと動物たちが力を合わせて汽車を走らせる話。

Ten Out of Bed
Penny Dale (Walker Books)£4.99
 主人公Tedと彼のぬいぐるみたちのお話。一匹ずつ眠ってゆく。汽車は最初だけ出てくる。砂浜で遊んだり,劇をしたり。海賊ごっこをしたり,と夢のようなお話。最後に誰が寝るのかな?

Railways
Althea and Edward Parker(A & C Black)£7.50
 鉄道が現在の形になったルーツから説明。車輪の形一つにしてもいろいろの工夫がされているのだと,子供に理解させ,鉄道の歴史が楽しく分かる本。

Railways & Trains
Caroline Young & Coline King (Tiger Books International)£6.95
 蒸気機関車が最初に作られた時の経緯や,機関車の進歩の説明がされている。時代時代の乗客の様子も彼らの衣装と共に興味深い。リニアモーターカーまでの説明もある。

Learn with Thomas
Christopher Awdry・Ken Stott (Heinemann)
 機関車トーマスとその仲間たちと一緒に学ぶ単語帳。園児から低学年向き。


恐竜・モンスターの出てくる本
If Dinosaurs Came to Town
Dom Mansell (David Bennett Books)£3.99

 現代に恐竜がいたらどうなるか?というお話。街は無茶苦茶。でも,なんだか滑稽で面白い本である。


Dinosaur Poems
Dragon Poems
Monster Poems
John Foster and Korky Paul (Oxford University Press)各£4.99
 Poemのアンソロジー。内容は子供には難しい単語がいっぱい出てきて難しいかもしれない。実際小さな辞書に載っていない単語が出てくる。けれども気持ち悪いモンスターやへんてこなドラゴン,恐ろしい恐竜の絵を見ながら読んでみると,なんとなく意味が分かってくる。Poemであるから,声に出して呼んでみると小気味良いリズムがある。

Here Come the Aliens!
Colin McNaughton (Walker Books)£5.99

 最高に面白い。地球征服をもくろむ様々の気持ち悪い宇宙人たちがたくさん登場する。どれをとってもすごくへんてこな奴ばかり。しかし,彼らは地球人の4歳の子供たちの写真を見て,余りのすごさに退散してしまうのだ!息子が4才の時のお気に入り。かれもまさしくこの写真の仲間の一人だったのである。



その他の本
Dare You Go... Into the Forest
Benedict Blathwayt (Brown Wells & Jacob Ltd.)£4.50
 仕掛け絵本。もりの中の不気味なお屋敷。ドアをあけ,階段を上り,キャビネットをあける・・・すると!

Who Lives Behind the Door?
Benedict Blathwayt (Black & White)
 仕掛け絵本。様々なドアを開けると,誰が出てくるでしょう?おばあさん,王様,ピエロ・・・次男のお気に入り。

Kitten Finds a Home
Micheke Coxon (Happy Cat Paperbacks)£3.99
 
ピックウィックさんのせいじへのクリスマスプレゼント。迷子のこねこが自分の居場所を探すお話。仕掛け絵本になっており,かわいい動物の絵がせいじのお気に入り。

The Oxford Children's A to Z of Music
H. Carpenter, P. Keene, C. Wood (Oxford University Press)£5.99

 Oxford University Pressの子供の本は,どんなものでも堅苦しさを排しつつ,子供たちの興味をひく最大限の工夫をしている。本書は,小中学生向けの初級音楽事典だが,きれいなカラー写真やユーモラスなイラストをふんだんに使い,文章もやわらかい。バッハには20人の子供がいたことにも触れている。シューベルトやシューマンよりもエルガーの扱いが大きいのは,英国の音楽事典ならでは。