Joy to the World


 クリスチャンでなくとも誰もが知っている「もろびとこぞりて」(賛美歌第112番)は,「牧人ひつじを」とは対照的に,日本語訳が曲にぴったりとはまったよい例であろう。まず英語曲名の"Joy to the World"を「もろびとこぞりて」と意訳したのがよかった。次に上の声部と下の声部が掛け合いとなるこの曲のハイライトを「主はきませり,主は,主はきませり」としたことで,原曲のきびきびとした迫力を失わずに音楽と日本語をマッチさせることに成功している。すべての日本語訳賛美歌がこういう調子ならよいのだけれども,なかなかそうはうまくいかない。
 作詞者のIsaac Watts(1674-1748)はサウザンプトン生まれの英国人で,旧約聖書の詩篇第98編「賛歌」にもとづいて1719年に歌詞を書いた。一方曲を書いたのは,アメリカの音楽教師であったLowell Mason(1792-1872)である。1836年の作曲であるから,歌詞が作られてから100年以上後の英米合作によってこの名キャロルが生まれたわけである。Masonは有名なヘンデルの「メサイア」をアレンジしてこの曲を作ったと言われているが,真実のほどは明らかでない。しかし,勇壮で輝かしい音楽はたしかにヘンデルを思わせるものがある。
 このMIDIでは,現代英国の著名な合唱曲作家であるジョン・ラターのアレンジにもとづいて,繰り返し後にトランペットの華麗なソロをつけてみました。いかがでしょうか。