Carol


BGM is "O little town of Bethlehem" arranged by R. Vaugn Williams.




*CD番号は私が買ったときのものです。購入される場合は必ずご自分でチェックしてください。


■The John Rutter Christmas Album

(Collegium CSCD 510)

 英国合唱界の大御所的存在で,作曲家,編曲家,指揮者として広く活躍しているジョン・ラターが手兵のケンブリッジ・シンガーズを率いて録音したクリスマス・キャロル集。トラディショナルの英国キャロルも入っているが,ラター自身の作曲によるオリジナル・キャロルが中心なので,彼の作品をまとまって聴くためには格好のアルバムである。日本ではあまり知られていないアイリッシュ・トラディショナルの名曲"Wexford Carol"から始まるこのCDを聴きはじめてすぐに独唱と合唱を織りまぜたすばらしいアンサンブルに期待が膨らむ。ラターのオリジナル・キャロルはどれも親しみやすく,聴いている方も歌いたくなうようなメロディーがいっぱいだ。たとえば,弾むようなリズムの"Jesus child",しっとりした情感とバリトン・ソロが美しい"Wild wood carol",文字通り天使が歌っているような"Angel's Carol",ユーモラスな味のある"Shepherd's pipe carol",ひたすら美しい"Love came down at Christmas"などなど。ケンブリッジ・シンガーズのコーラス・独唱陣のハーモニーは完璧で,ザ・シティ・オブ・ロンドン・シンフォニアによる伴奏も美しい。ジャケットやCDのデザインもお洒落で凝っている。声とりわけコーラスが好きな人へのクリスマス・プレゼントとして,最高の1枚ではないだろうか。キャロルのアルバムを聴いてこれほど幸福な気分になったのは久しぶりだ。ラターのアレンジしたキャロルを実際に歌ってみたい方には,彼がウィルコックスと共に編集した楽譜"100 Carols For Choirs" (Oxford University Press)もお薦め。



■Chrismas Carols and Motetos

(Gimell CDGIM 010)

 このCDは,「中世英国のキャロル」,「コヴェントリー・キャロル」,「アヴェ・マリア」,「ドイツ・コラール」の大きく4つからなる。最も時代が新しい「ドイツ・コラール」には,プレトリウスの「一輪の薔薇が生れ出た」や,バッハの「目をさませ」のようなポピュラーな曲も入っているが,英国の作者不詳の古いキャロルにはあまり聴いたことがないものも多い。「コヴェントリー・キャロル」の「おやすみ,小さなかわいい坊や」は,その中でも有名な曲であろうが,優しさに満ちた旋律が素晴らしい。ときどきこの時代の英国音楽に特有の不協和音が出てきてびっくりする。バードの「子守歌」ともなると,さすがにポリフォニーの手が込んでいて,「子守歌」といえどもバードが手を抜かずに全力投球しているのがよく分かる。大陸の大作曲家ジョスカン・デ・プレやヴィクトリアのアヴェ・マリアの美しさも特筆もの。タリス・スコラーズの録音の中でも異色の1枚。



■Carols From the Old & New Worlds

(HMU 907079)

 「旧世界(ヨーロッパ)と新世界(アメリカ大陸)のクリスマス・キャロル」という魅力的なタイトルを冠した,ヒリヤー指揮シアター・オブ・ヴォイシズの合唱による素敵なアルバム。素朴で楽しい世界各地(アメリカ,イギリス,オーストリア,ドイツ)の伝承歌もいいし,20世紀の作曲家(アイブズ,シベリウス,ホルスト…)による創作キャロルもいい。私がなんといっても好きなのはホルストの「In the bleak mid winter(冬のさなかに)」。 「惑星」で有名なホルストが,このような優しく美しいキャロルを書いていることを多くの人に是非知っていただきたい。ありきたりでないクリスマス・アルバムを探している人にお薦め。



■The Wallace Collection's Victorian Christmas

(VICTOR VICG 5458)

 これは,解説をそのまま引用すれば,「ヴィクトリア時代のクリスマスをヴィクトリア時代に演奏されていたそのままの音楽で再現した,世界最初のアルバム」である。そして,このアルバムの目玉は何といっても「ブラス・バンド」である。このCDで再現されたバンドはオフィクレイドというヴィクトリア時代が終わる前にすたれてしまった楽器(写真で見ると何とも変な形をしたラッパである)を含めて,すべて当時の楽器で演奏されている。音を出すだけでも困難な,極めて高度なテクニックを要する当時の金管楽器を演奏して,このように鑑賞に堪えるアルバムを作れたのも,ジョン・ウォーレス率いるウォーレス・コレクションの超絶技巧あってのことだろう。ブリテン・シンガーズとトリニティ少年合唱団も好演。ミスター・ビーンの「メリー・クリスマス・ミスター・ビーン」という作品で,ビーンがキャロルを救世軍のブラスバンド相手におもしろおかしく指揮していたのを覚えていらっしゃる方も多いのでは?



■Chrismas Carols from Tewkesbury Abbey

(NAXOS 8.553077)

 イギリス滞在中,このチュークスベリー・アベイを観光に行った。その時も,この修道院学校合唱団は広い教会のホールで熱心に練習していた。美しく透明な歌声であった。今や天下のNAXOSに録音を残したこの合唱団の名声はますます高まるであろう。よく知られたキャロルを中心に20曲たっぷりと合唱団の歌声を堪能できる。ヴォーン・ウィリアムズが編曲したキャロル「天よりの真理」のちょっとメランコリックな美しさは忘れがたい。



■デンマークのクリスマス

(NAXOS 8.554627)

 ふだんデンマークの音楽を聴く機会は少ないが,すべてデンマーク語で歌われたこのアルバムはデンマークのオリジナル・キャロルの魅力を存分に伝えてくれる。ここに収められたキャロルの作曲を担当したデンマーク人作曲家の多くは19世紀のロマン派時代に活躍した人たち。そのためか,キャロルのメロディーやハーモニーもロマンティックでうっとりさせられるものが多い。ムジカ・フィクタの澄んだア・カペラのハーモニーが恍惚感に満ちたひとときを約束してくれる。



■クリスマスの神秘

(NAXOS 8.554179)

 俗っぽいタイトルのCDだが,選曲はなかなか凝っている楽しいキャロル集。ポーランドやオランダの伝承キャロルがある一方で,20世紀フランスの作曲家プーランクの「クリスマスのための4つのモテット」やオネゲルの「主をたたえよ」や現代カナダの作曲家による新しいキャロルも収められている。現代イギリスの人気作曲家ジョン・ラターの「さらに美しき音楽」やジョン・タヴナーの「神は我らと共に」といったキャロルも収められているので,イギリス音楽ファンにも見逃せないキャロル集。



■フレンチ・カナダからのキャロル

(NAXOS 8.554435)

 クリスマス・キャロルのCDといえば,英語で歌われたものが圧倒的に多い。これは英語の万国共通語としての強み,英米系レーベルの強さに加えて,英国に伝統的に優れた合唱団が多いことにもよるだろう。このCDは英語ではなくフランス語で歌われたキャロル集である。それも歌っているのはフランスの合唱団ではなく,カナダのフランス語地域であるケベック州モントリオールの合唱団という変り種。英語で聴き慣れたキャロル,たとえば「きよしこの夜」や「あらのの果てに」もフランス語で聴くと全然違った感じがする。プログラムの後半にはヒューロン・キャロル(カナダ),ウクライナ・キャロルのようなちょっと珍しいキャロルも収録。歌っているラ・プティト・バンド・ド・モントリオールの歌声,とくに女声は非常に透明ですばらしい。



■きよしこの夜/バトル−クリスマスを歌う

(EMI TOCE5961)

 これは,10年以上前日本でも人気絶頂だったキャスリーン・バトルが有名なクリスマス・キャロルを歌いまくるという,すごく「ミーハー」な企画のアルバムであった。オーケストラやバックのコーラスのアレンジも仰々しいし,ア・カペラの素朴なキャロルを好む人からは「邪道!」と白い目で見られそうだ。これを救っているのが,バトルの歌声そのものである。リリカルで清楚なバトルの歌いぶりは,キャロルにぴったりなのだ。



■きよしこの夜/鮫島有美子クリスマスを歌う

(DENON COCO 75121)

 ひとつくらいは日本語で歌われるクリスマス・キャロル集をあげよう。日本の童謡の録音でもたくさんの実績を残している鮫島有美子が,日本人のために歌ったクリスマス・キャロルだ。祖父母が熱心なクリスチャンで,毎年クリスマス・イブになると,教会の合唱団が私の家の前でクリスマスの「賛美歌」を歌っていた。北国の雪とクリスマスとキャロルが一緒になって,小さい頃の思い出として私の中に残っている。



■Bury Lawn School −A Children's Christmas

(EMI 7243 4 97543 24)

 これは英国の小学校の6才から12才までの「普通の生徒」が歌ったクリスマス・ソング集で,同じ子供でも修道院やチャペル付属の合唱団のように「プロ」としての厳しい訓練を受けた子供が歌っているわけではない。当然,合唱のレベルとしては低く,じっと鑑賞するCDとしては向いていない。しかし,多少音がはずれていても,合唱が合わなくても,子供が一生懸命歌っている姿が想像できて,かわいらしくほほえましい。英国の子供がクリスマスに歌う人気曲はこれこれなんだなという参考にもなる。



■The World of Advents- und Weihnachtslieder

(ZYX 11029-2)

 英国Bath滞在中にドイツ・オーストリアのクラフト・ショップHansel und Gretelで購入した歌,解説等すべてドイツ語の2枚組CD。ドイツ語に疎い私には曲目の意味すらよく分からないものも多い。「Stille Nacht(きよしこの夜)」のような万国共通のポピュラーな曲も入っているが,英国系のキャロル集では耳にしない曲も多いので,ドイツ圏に固有の伝承歌も多いのだろう。しばらく英国系キャロルばかり聴いていたので,このCDは新鮮であった。


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