Bath関係の本


■「最後の刑事」

ピーター・ラヴゼイ 著/山本やよい 訳(ハヤカワ文庫)¥880
 私自身がミステリに熱中していたのは中学〜高校時代にかけてで,最近はあまり読むこともないのだが,最近上の子がアルセーヌ・ルパンに熱中しているのにつられてというか,ときどきドイルのホームズ物やチェスタトンのブラウン神父物を読み直したりしている。そういうヴィクトリア朝時代に生まれた古典に比べれば,この作品は1991年発表ということで,ぐっと新しい。そして本書のタイトルになっている「最後の刑事」とは,バース署に勤める無骨で昔気質の刑事,ピーター・ダイヤモンドのことなのである。英国生まれのミステリ数多しと言えども,バースを舞台にした長編ミステリとしては初めての作品であろう。バースゆかりの女流大作家ジェイン・オースティンの手紙が重要なモチーフになっていたりして,バースのファンには是非ともお薦めしたいミステリである。



■「バースへの帰還」

ピーター・ラヴゼイ 著/山本やよい 訳(ハヤカワ文庫)¥900
 ピーター・ダイヤモンド刑事のシリーズ第1作が上にあげた「最後の刑事」であるが,本作「バースへの帰還」では,ダイヤモンドは「元」刑事という設定になっている。そのダイヤモンドが脱獄事件をきっかけにかつての職場であるバース署に呼び戻される。これが「バースへの帰還」なのである。本のカバーにはバースのトレード・マークであるロイヤル・クレッセントの写真が使われている。肝心な内容の方は,とてもスリリングでおもしろい展開のミステリーで,「英国推理作家協会賞」を受賞したのもなるほどと思わせる。



■「バースの肖像」

蛭川久康 著(研究社出版)¥3,300
 「英国本」あれこれの200冊目に収録する本はやはり愛するバースの本にしよう。そもそも私たちがこのサイトを開いたのも,バースに1年間滞在したことがきっかけとなっているのだから。さて本書は下で紹介した「地上楽園バース」と並び,日本で出版された「二大バース研究書」である。そして,小林氏の「地上楽園バース」がどちらかというとバースの社会史にウェイトを置いた著作だとすると,本書の方はむしろバースの文化史に焦点を当てた研究に見える。それは本書の「イギリス18世紀社交風俗事情」という副題からも明らかであり,とりわけ文学者とバースとの関わりについて論じた部分がおもしろく優れている。英文学に興味を持つ者にとってとくにおもしろくてたまらないのが,第6章「バースのサロン ―プライア・パークの客,フィールディング」と第7章「バースのスキャンダル ―リチャード・B・シェリダンの場合」である。イギリス小説の父と呼ばれるヘンリー・フィールディングについては,先日NHK BSで英国のBBCが製作した長編ドラマ「トム・ジョーンズの冒険」全5回が放映され,18世紀英国の社会風俗を強く印象付けた。第7章では,私がことあるごとにこのサイトで取り上げているバース生まれの作曲家トーマス・リンリー・Jrの姉にして絶世の美人ソプラノ歌手エリザベス・リンリーがヒロイン,すなわちシェリダンとの駆け落ち相手として登場する。このような話をわくわくせずに読むことができようか!「地上楽園バース」同様にバースを愛する人,興味を持つ人にとって必読の書である。



■「地上楽園バース」

小林章夫 著(岩波書店)¥2,500
 "St Aubins"がそもそもバースの素晴らしさを伝えることを一つの大きな目的としたサイトである以上,本書はもっと早く紹介すべき本であったかもしれない。しかし,テレビ英会話「イギリス大好き」の講師役としておなじみになった小林章夫氏の名を高めたこの画期的著作は,残念ながら現在絶版となってしまっている。たくさん売れる類の本でないことは確かだが,何と口惜しいことだろう。ロンドンに関する本だったら陳腐な内容のものでも次から次へと出てくるのに…。でも愚痴はこれくらいにしよう。
 本書を読んでバースについて知ることができ,また考えさせられることは実に多い。現在バースにかくも多くの美しいジョージアン建築が立ち並んでいるのはなぜか,18世紀になぜバースが上流階級の温泉リゾート都市として栄えたのか,ジェイン・オースティンをはじめとする19世紀の大作家たちがバースに惹かれたのはなぜか,英国の社会・文化史の上でバースという都市が果たした役割は何か…。惜しむらくはバースの歴史にウェイトを置いた著作であるため,18世紀におけるバースの実際の文化的状況に関する記述がやや希薄な印象を受ける。ちなみに本書によれば,「地上楽園」という言葉は,18世紀のリゾート絶頂期にバースに滞在した女性リディア・メルフォードの手紙の中に出てくるそうだ。今のバースにはもちろんこの言葉は当てはまらない。しかしバースが,一度訪れたら必ずもう一度訪れたくなる街,街並み自体が歴史と文化を物語る街,独自の魅力を湛えた世界でもかけがえのない街なのは確かである。



■「A-Z Map Bristol and Bath」

A-Z Map Co. Ltd., £3.75.
 一年間のBath滞在で一番お世話になったのは,このマップかもしれない。初めのうちはどこへ行くにも必要だった。Bathに滞在する人,少しマイナーなところを訪れる人は,この安くて役に立つマップをまず手に入れるべし。



■「Focus on Bath and Bristol」

AA Publishing, £4.99.
 私達もさんざんお世話になった「車のお助け屋」AAが出しているBathとBristol近辺のガイドブック。町,建物,パーク,アトラクション等をアルファベット順に掲載しており探しやすい。値段のわりに写真も豊富でよい。素晴らしいWellsの大聖堂など,日本ではあまり知られていないが行く価値のあるところが数多く紹介されている。これに限らずAAは出版物に力を入れており,下手な出版社のものよりよほど優れた観光ガイドをたくさん出している。



■「Pitkin Guides  City of Bath(ピトキン・ガイド シティ・オブ・バース )」

Pitkin Guides, £2.50.
  英国の大手ガイドブック会社のBathガイド(英国の観光都市に行くと,どこでもこの出版社のガイドが売っている)で,英語版に加えて日本語版もあり,Bath市内なら,土産物屋やインフォメーション・センター等で簡単に手に入る。Bathの歴史,主な建築物,見どころを概観するのによい。日本語版は訳がややかたいが,読みにくいというほどではない。



■「The Royal Crescent -Book of Bath- 」

James Crathorne, Collins & Brown, London (1998). £25.00.
  著者はThe Royal Crescent HotelのオーナーにしてBathのGeorgian Group議長。私がバースに滞在中に新刊として出版され,著者のサイン入りの本を購入した。著者がこの本を著したのは,もちろん自分が経営するホテルを宣伝したいという理由があったろうが,それだけに留まらない充実した内容となっている。Bathを代表する名建築The Royal Crescentを中心に据えながら,古代〜現代のBathの歴史,社会,文化が時代順に述べられる。貴重な図版多数。£25.00の値段は決して高くない。大型本で多少重いが,日本に持ち帰る価値がある。



■「From Bath With Love 」

Photographs by Bob Croxford, Atmosphere (1995).
 これは,帰国前に何か1冊きれいなBathの写真集を買おうということで本屋を色々探して求めた本である。新しく美しいオリジナルの写真多数にBathにちなんだ歴史上の人物の言葉が添えられている。Bath市内だけでなく,郊外や,英国で最も美しい村と称えられるCastle Combeの写真もある。巻末にはロケーションについての詳細なINDEXが付いている。さすがプロの撮る写真だけあって,私がHPに貼り付けている写真なんかとは全然質が違う。Bathを愛する人に是非奨めたい。



■「Discovering Widcombe and Lyncombe, Bath」

Maurice Scott, Widcombe Association, Bath (1993). £6.50.
 Widcombeは私達が住んだSt Aubinsがある地域の名前で,Lyncombeもその近くの地域。Avon川を渡ってBath駅の南側にあるこの地域を訪れる観光客は稀である。Royal CrescentRoman Bathのようなメジャーな観光スポットがすべて駅の北側にあるからである。ところが,実は駅の南側にも,壮大な邸宅Prior Parkに代表される貴重な建築や,おもしろい歴史が過去に存在していたことがこの本を読めば分かる。



■「The Buildings of Bath」

Ricahard Morriss & Ken Hoverd, Alan Sutton Publishing, Stroud (1993). £7.99.
 これは隣のPickwickさんからクリスマスのプレゼントとしていただいた本である。裏表紙には「あなた方がBathで過ごした時間を覚えておけるように。」との言葉が添えられていた。初めてBathの街を訪れて,その美しい建築郡に魅せられてしまった人は多いだろう。この本は,有名な建物から無名の建物まで,Bathに現存する歴史的に価値ある建物100を,種類別に紹介した本である。ふだんは何気なく見てしまう建物に,こんな歴史があったのかと知ることは,Bathのような古い歴史を持つ街の場合特に楽しいことであろう。



■「Bath With Your Kids 3rd Edition」

Bath With Your Kids, Bath (1997). £3.99.
 Bath及びその近郊に住む親にとって大変役に立つカラフルな表紙のハンドブック。行政サービス・相談所から,子供のための活動・クラブ,赤ちゃん・トドラーグループ,ベビー・シッター,お薦めレストラン,子供用品を扱っているショップ,子供向きのミュージアム,雨の日でも遊べる場所,市内の無料トイレに至るまで,子持ちの親に役立つ情報満載。



■「Let's Go With The Children」

Cube Publications, Surrey (1998). £2.75.
 コッツウォルズ,バース,ブリストル及びその近郊で子どもを連れて行くのにお薦めのスポットを紹介したガイドブック(ロンドンについても載っている)。いくら英国には素晴らしい大聖堂,ガーデン,ミュージアム,マナーハウスがたくさんあるからといって,大人向きのところばかり行くのでは子どもがかわいそうだ。でも子どもを連れて行って喜びそうなところは何処?そのときこのガイドブックが役に立つ。帰国後,上の子に「イギリスで,どこに行ったのが一番楽しかった?」と聞いて,すぐに返ってきた返事が「レゴランド!」。であった。