英国の病院


GP登録
  St Aubinsに入居してすぐ Pickwickさんから教えてもらったWidcombe Surgeryに登録することにする。日本を発つ前の情報では1年未満の滞在ではGP(General Protictioner:ホームドクター)には登録できず,Privateの医者にかかる必要があるといわれていたため,1年以上滞在する予定ということで登録することにする。しかしながら,Bathの場合人口も少ない田舎町ということもあり,Privateの開業医はほとんどいないようである。一般に日本で流布している情報はなにごともLondon中心であり,Bathには当てはまらないことも多い。結局たいした審査もなく登録できた。ただ,一週間後に健康診断を受ける必要があった。これは看護婦によって行われる診察での面接である。前もって多少病気の名前を覚えていったが,結局分からないことも多く困った。しかし日本で持病がないこともありすべて適当に"No!"といって済ませた。しかしながら,日本人の友人でNoと答えているうちに破傷風の予防接種を夫婦そろって受けなければならにことになったという話も聞く。さらに子供達はHealth Visitorに登録されることになった。
 その健康診断から数日後家に保険証が届く。一応病気になっても安心なのでホッとする。結局長男は4,5回,次男は11回,夫は1回ここのSurgeryのお世話になった。

Surgeryでの診察
 まず,最初に風邪をひいたのは次男である。前の日まで元気にしていたが,朝になると熱が高くぐったりしている。日本人の友人から英国の名高い小児用万能風邪薬Calpolの話を聞いていたので,それを飲ませてみると熱は下がる。しかしながらまだ1歳の子供である。心配なので診察してもらう。電話で予約を入れるがいつものように,少し大げさに言って,すぐ診てもらうことにする。もちろんいつものことだけれど,待合室は2,3人の患者しかいない。日本の小児科のように1時間以上待たされることはまずない。親としてはありがたいことである。

 診察室に入る。主治医のDr. Chapmannである。喉と耳を見て,熱を測り,聴診器を当てて視察される。「たいしたことはない,Calpolでも飲ませておきなさい。」ということで,別に薬の処方もなくこれで終わりである。


抗生物質を処方される
 しかし同じ風邪が長男に移ったようだった。もともとよく風邪を引く方であるが,イギリスに来て3ヶ月はすごく元気なので,こちらの気候が彼に合うのかなと思って喜んでいた矢先であった。彼の場合も弟と同じく最初はCalpolでも飲ませておきなさいということだったが,全然元気にならない。心配になってもう一度連れて行くと胸の下のあたりにノイズが聞こえるといわれる。珍しく抗生物質が処方される。日本のとは違いこの抗生物質はバナナ味のする黄色い液状の薬である。そしてすごくまずいらしい。子供向きの抗生物質という点では日本の薬の方がはるかに進んでいるようである。ペニシリン系の薬だという説明を受けた。だが,これを飲ませても一向に効く様子が無い。彼は息も苦しそうに口を開けて呼吸するし,鼻もぴくぴくしている。顔色も悪いばかりでなく,ほとんど食事が出来ず,衰弱して行く様子は親としてもすごくつらい。夫に頼んでSurgeryに一緒に行ってもらう。2人で行けばより詳しく病状を医者に説明できるからである。


かずし肺炎になる
 結局長男は肺炎だと診断される。そしてBathの Royal United Hospital(RUH)を紹介してもらう。ここからはびっくりするくらい迅速である。でも実際は紹介された病院で何をするのかよく分からなかった。つまり,より詳しく検査をするだけなのか,それとも入院するのかはっきり知らされていない。後で知ったところによると,RUHに紹介されること,イコール入院する必要があるとGPが判断したということらしい。 Royal United Hospitalは総合病院で非常に大きい病院だった。大急ぎで行った病棟はJohn Apley Wardというところである。この病棟建設に功績のあった人にちなんだ名前がつけられている。喘息など呼吸器系の病気の小児病棟である。この病棟はL字型の平屋で,白い柵で囲まれた庭がある。5室ほどの個室と大部屋2つ。入院している子供は20人ぐらいであろうか。それに対して看護婦は4,5人いる。
 最初に簡単な問診を受け,大きな椅子がついている体重計で体重を量る。この病気で彼は3kgも痩せたようである。そして子供が嫌がらないようにという配慮からか血圧計も指で測る。それだけで終わり,彼の病状は前もってGPからオンラインで報告されているため,新たにあれこれ診察することはない。ぐったりしている子供も検査される必要がなく気分的にも肉体的にも楽なようである。ただ,レントゲンだけはSurgeryに無いし,この病棟にも無い。彼は車椅子にのせられ看護婦さんに押されて隣の施設まで行く。夫が付き添っているが,すごく不安そうな顔をしている。
 レントゲンが済んでベッドでゆっくり休ませていると,ようやく主治医が回診にまわってくる。子供の病状の説明である。抗生物質で肺炎は完治しているが,今は喘息の発作が起こっている,といわれる。彼は日本でも気管支は弱いとは言われていたが,喘息といわれたことはなかった。「一時的なものか,これから風邪が引き金になってしばしば発作をおこすかどうかは分からない。」とも言われる。なんだかショックである。彼にはイギリス生活がストレスになっていたのだろうか?喘息用の吸入器セット(子供はこれをパフパフと呼んでいる)をもらい,看護婦さんに吸入の仕方を教えてもらう。うまくできると,看護婦さんは"Good boy"と子供をほめることを忘れない。このパフパフは日本に帰国したあともそのまま大事に使っている。日本の病院で処方される吸入薬も英国製であり,この吸入器にぴったり合う。英国は古い車の排気ガスなどが原因で喘息患者が多く,国も製薬会社も喘息治療に熱心に取り組んでいるため,喘息の治療では進んでいるのだ。


英国の総合病院
 病院は日本と全然違う。子供達はほとんど1日2日で退院して行く。うちの子も当初は2,3日入院と言われていたが,1日だけの入院で退院した。そしてほぼ元気になっている子供を誰もベッドに縛りつけようとはしない。Play RoomでSnookerをやっている子供もおれば,庭に出て自転車や三輪車に乗って遊んでいる子も,滑り台を滑っている子もいる。また,呼吸器の病気なのに庭にはウサギが放し飼いにされている。触ったあとでも手洗いを強制されることは無い。本当にここが病院だろうかと思う。1週間以上入院している子が院内の教室に勉強にいける(これも一つだけではなく,各病棟にあるようだ)。病院であることを感じさせるのは,時々検温時間になって,看護婦さんが自分の担当の子供を探し回っている時だけである。

 後日上の息子は原因不明の足痛でもう一度RUHに入院したが,その時は喘息で入院した時よりはるかに元気であったため,一人で入院した。そこはABC Wardと呼ばれる外科病棟であった。実は私たちが「ついてあげようか?」と聞いたとき,「大丈夫」と彼が言ったため一人置いていってしまったが,彼は不安だっただけでなく,夜中じゅう遊びまわる同室の子供や,テレビゲームをやめない子どもたちがあまりにもうるさくて眠れなかったらしい。そして,このような元気な?子どもたちは昼間はほとんど寝ていないばかりか,ベッドにもおらず,もっぱら暇そうな付き添いのお父さんの格好の昼寝の場を提供することになっていた。

ABC Wardのプレイルーム。元気なせいじも便乗。

 ところで,ベッドは日本と変わらないが,かずしが肺炎で入院したのは,9月末,夜ともなれば結構冷え込む時期となっていた。しかしながら,シーツ1枚しか与えられない。熱が高かったのでぶるぶる震えていた息子にトレーナーとシャツを着せていたら,厚すぎると言われたぐらいである。よく見ると上半身裸で何もかけずに寝転んでいる子供もいる。夜にはヒーターが入るということだか,本当に寒くないのだろうか?また,熱が高いので,Surgeryに子供を連れて行くとCalpolだけでなく,ぬるいお湯(別に水でもかまわない)につけたらよいといわれる。やっぱり国が違えば,病気のケア一つとっても違うんだなあと思う。
 だた,結果として息子は元気になったからよかったとはおもうが,もっと早く対処して欲しいと思う。抗生物質にしても使い過ぎるのは確かによくないが,息も絶え絶えで苦しそうにしていた息子を見て,早く日本に連れて帰ってやりたいと心から思ったものである。
 しかしながら,一日入院して,検査も受けて,吸入器ももらって,(おいしくないけれど) 食事もついていて,退院した後も吸入薬がなくなるとタダでもらえ,とにかくすべて無料であることを考えると,税金を払っている英国民と,外国人でも差別なく恩恵を享受できる英国の医療制度に感謝しないわけにはいかないだろう。
 

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