クリスマスの絵本

BGM is "Good King Wenceslas".


 クリスマスの絵本にはキリスト教という宗教にとらわれない楽しさや美しさがあります。胸を打つお話,心が温まるお話もたくさんあります。世界中の作者が様々なお話を,様々な描き方でつくっているクリスマス絵本は,バラエティーの豊かさという点で,絵本の好きな読者に大変魅力のあるジャンルなのです。クリスマスの時期だけでなく,いつでも楽しめるクリスマス絵本をぜひ手に取ってみてください。



■ちいさなもみのき
マーガレット・ワイズ・ブラウン 作/バーバラ・クーニー 絵(福音館書店)¥1,100

 ほかのもみの木とは離れてたった1本だけ森のはずれに育った小さなもみのきが,クリスマスを前にしたある冬の日,足が悪く家のベッドで寝ている男の子のもとへと父親の手によって運ばれる。父親はもみのきに言う。「まいとし,ふゆには,おいわいをしに やってきて,はるには もとのみどりののはらへ,かえっていくんだよ。ここまでやってこられない,わたしのむすこといっしょに,おおきくなっておくれ。あのこが げんきになるように,ちからになっておくれ。」…こうして,ちいさなもみのきは,毎年冬になると男の子のもとへと運ばれて,美しく飾り付けられたクリスマス・ツリーとなり,男の子を元気づけ,心の慰めとなるのだった。ところが年月がたち,ある年の冬のこと,もみのきは父親が自分を男の子のところへ連れて行ってくれる日を心待ちにしていたが,ついに父親はクリスマス当日になっても来なかった。そのとき,キャロルを歌いながらもみのきへと近づいてくる子どもたちの姿があった。そして,灯りを手に持ち,子どもたちの先頭に立って歩いている子こそ,すっかり元気になって自分の足で歩けるようになったあの男の子であった…。子どもたちは,もみのきの前でキャロル"Wassail song"を歌い,きれいなモールでもみのきを飾り付けるのだった。この本で歌われる"O Tannenbaum"(もみの木)や「来てよ雌牛よ納屋の中」といったキャロルは,すべて絵本の中に簡単な楽譜がついている。
 20世紀前半のアメリカを代表する絵本作家でありながら1952年に42才の若さで世を去ったマーガレット・ワイズ・ブラウンが病気の男の子とその父親,そしてちいさなもみの木の思いを,静かに,しかし暖かく語っていく。そして2000年に惜しまれつつ亡くなった名手バーバラ・クーニーの抑えながらも美しい絵。この絵本はブラウンが世を去って2年後の1954年にはじめて出版された。古きよき時代のアメリカを感じさせるいつまでも残したいクリスマス絵本。



■魔法の夜
ドミニク・マルシャン 原作/アルブレヒト・リスラー 絵(講談社)¥1,600

 このすばらしい絵本のことを私が知ったのは,雅楽師として活躍している東儀秀樹さんが,朝日新聞の「私のお気に入り」のコーナーで取り上げていたのがきっかけだった。早速手に入れて読んでみると,まさに「身近な幸せの温かさ」,「読むうちに,心が熱くなってきて」と語る東儀さんが言う通りの絵本だった。
  どの家も,まぶしいくらいにろうそくの明かりがともされた華やかなクリスマスの夜。家路を急ぐ人々の中で,ただ一人住む家もなく,あてもなく歩いていた一人の老人がいた。老人は雪の降る中で金色の星のついた首輪をした白い小さな犬に出会う。パンを犬と分け合い,物語をきかせてやったり歌を歌ってやり,粗末な小屋で犬と一夜を過ごす。犬はふいに自分が魔法使いであることを老人に告げ,親切にしてくれたお礼に老人の願いを叶えてくれると言う。しかし,老人が願ったことは,家を持つことでも,金持ちになることでもなかった。彼は「犬の友達」がほしかったのだ。老人の願いを叶えるため,魔法使いの犬は魔法の力をもつ金色の星のついた首輪をはずし,老人の友達になることを決心した。そうして夜が明け,再び歩き出した老人の足もとをぴったりとついていく白い小さな犬の姿があった…。
 この物語は,元々フランスの歌手ドミニク・マルシャンが1972年に歌物語として発表したものである。彼の歌声と,実際のエピソードにもとづいた物語は当時多くの人々の心をとらえたという。歌にはリトンという人物が登場するが,彼はショピンという名の犬をつれて南フランスを放浪し,冬の寒い夜にマルシャンのもとへ身をよせたことがあったというのだ。この歌を再び世に出したいという人々の熱い思いによってリバイバルされたのがこの絵本である。クリスマスに真にふさわしい「本当の幸せ」を考えさせるこの絵本を読んで,マルシャン自身の歌がどのようなものであったか聴いてみたくなったのは私だけではあるまい。この本の絵を描いているのはスイスのアルブレヒト・リスラー。濃淡の微妙なタッチが非常に美しいパステル画が心温まるクリスマス・ストーリーにふさわしい。


■サンタクロースの辞典
グレゴアール・ソロタレフ 作/大岡 信 訳(朝日新聞社)¥2,136

 1993年ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞(幼年部門)を受賞した傑作絵本。まず最初に,「サンタクロースの辞典」なんていう奇想天外な絵本のアイデアを思いついたソロタレフという作者に拍手を送りたい。そして,AからZまで(オリジナルはフランスの絵本なので,英語ではなくフランス語である)ズラリと並んだ項目の,楽しさ,おかしさ,意外性。たとえば,「しり」という項目では,「サンタクロースにしりを向けるいやな猿」が出てくる。そして,赤などの原色を生かしたカラフルでポップでユーモラスな絵。ステレオ・タイプではない,人間味豊かなサンタクロースの世界を満喫できる絵本。詩人,大岡 信の訳が簡潔にして詩的なのもすばらしい。子どもだけでなく,大人も楽しめる二重マルのクリスマス絵本だ。




■ゆかいなゆうびんやさんのクリスマス

ジャネット&アラン・アルバーグ 作/佐野洋子 訳(文化出版局)¥1,748

 世の中に仕掛け絵本は多いけれども,これだけアイデア豊富で,親子でいっしょに楽しめて,何回見ても飽きずに遊べるという仕掛け絵本はそう多くはないだろう。「ゆかいなゆうびんやさん」は,赤ずきんちゃん,ハンプティ・ダンプティ,サンタクロースといった,子どもたちにおなじみの「有名人」にクリスマス・カードなどを配っていく。その本物のカード等が封筒に入ってページごとについているのだから,好奇心の強い子どもにはたまらない。ただのカードだけでなく,すごろくやパズルも…おっと,この先は本を買ってのお楽しみ!原題は"The Jolly Christmas Postman"。 英国の作家による絵本だけあって,マザー・グースや古い民話をユーモラスにアレンジしている。絵の中をよーく見てみると,マザーグースの「コールの王さまのおしろ」がさりげなく描かれていたりする。英国の絵本がお好きな方にも,もちろんお薦めの一冊である。リズム感のある日本語訳も特筆もの。



■1993年のクリスマス

レスリー・ブリカス 文/エロール・ル・カイン 絵/きたむらたろう 訳(ほるぷ出版)¥1,400

 表紙絵の暗い顔をして頭を抱えているサンタがこの絵本の内容を象徴している。人間が素朴に生きていた昔と違って,様々な法律やきまりに縛られた現代社会では,サンタの仕事はややこしくなるばかり。いろんな国に提出する書類は50万枚も必要で,もし手続きを怠ると不法入国扱いされたり,プレゼントを税関で没収されたりするらしい。トナカイが駆け巡る空だって,昔は考えられなかったジェット機やら人工衛星やらの障害物でいっぱいだ。プレゼントを配る子どもたちだって,昔は小人が作ったおもちゃのボートやきしゃで大喜びしていたのに,今はそれじゃダメらしい。…そうして2000年の間に徐々に積もり積もった不満が爆発して,ついにサンタクロースは1993年,プレゼントを配って回る仕事をやめることにしてしまった。これほど諷刺と皮肉たっぷりで苦い味のするクリスマス絵本もあまりないだろう。それでいてエロール・ル・カインの遺した絵は驚くほど美しくファンタジックなので,ストーリーと絵のギャップがよけい際立つ。サンタクロースが昔を回顧して「いまにくらべると,ほんのちょっとのことで,まんぞくし,幸福というものを,とってもだいじにしていた。」と語る場面があるが,大人も子どももこの言葉をもう一度よく考えてみる必要がありそうだ。



■ゆき

T・マーヴリナ 絵/Yu・コヴァーリ 文(ブックグローブ社)¥2,500

 ロシアの冬はすごく寒くて一面雪におおわれた世界だということは誰でも知っていることだけれども,絵本の世界でロシアの冬を描いた作品というと,私にはあまり思い浮かばない。我が家のライブラリーでは,おじいさんが雪の上に落とした手袋の中に次々と動物が入っていくユーモラスな「てぶくろ」(福音館)というロングセラー絵本があるくらい。日本で出版される外国絵本は,圧倒的にアメリカ,次に西欧のものが多く,ロシアや東欧オリジナルの絵本はまだまだ少ないように思われる。この「ゆき」も,大手出版社から出ているわけではないし,値段も決して安いとはいえないから,売れ線の本ではないのだけれども,「ロシアの冬と雪」をあますところなく描いた素晴らしくまた貴重な絵本だと思うので,クリスマスの時期に一読をお薦めしたい。本書は14のおはなしと絵で構成された絵本で,それぞれのおはなしは独立しているので,どこから読んでもよい。起承転結のはっきりしたストーリーというよりは,ロシアの冬に農村や田舎町で見られる情景をYu・コヴァーリが豊かな想像力で詩に綴ったものといった方がよいだろう。アメリカや西欧の絵本とは一味も二味も違う,いかにも「ロシア的」な自然や人物を描いているT・マーヴリナは,ロシアでただ一人国際アンデルセン賞を受賞している大画家である。それぞれのお話には,マーヴリナが日本語版のために書いた芸術的な日本語の飾り文字が一文字ずつ描かれており(表紙の「ゆき」という題字もそうである),それを見ているだけでも楽しい。



■とってもふしぎなクリスマス

ルース・ソーヤー 文/バーバラ・クーニー 絵(ほるぷ出版)¥1,400

 正直で働き者だけれども貧しい靴屋に妖精が幸せをもたらすというストーリーは,ヨーロッパの民話や童話によくあるけれども,これは本当に心暖まる素敵なクリスマス絵本だ。寒い寒いクリスマスの前の晩,靴屋のおとうさんは出かけてしまって,家では3人の幼い兄弟が1つのベッドで震えながら寝ていた。すると,突然家に奇妙なかっこうの小男がやってくる。家に入るなり子どもたちにさんざん悪態をつき,勝手にベッドに入ってきて子どもを蹴飛ばして追い出してしまう。ところが,ひどい仕打ちをしているようで,三人がこの男の言う通りにすると,オレンジや,砂糖菓子や,クリスマスクッキーや金貨がポケットからたくさん出てくるではないか。でも,子どもたちが再びベッドを見たときには,いたずら好きのゴブリンのローリン王は跡形もなく消えていたのだった…。もともとはチロル民話であるこのおはなしを,ルース・ソーヤーは子どもの目から見た楽しいクリスマス・ストーリーに仕立てた。そして,すばらしく深みのある絵を描いているのは,現代アメリカを代表する絵本作家で惜しくも2000年に亡くなったバーバラ・クーニー。けなげな三人の男の子の表情が実にかわいらしい。



■そりぬすみ大さくせん

マイケル・フォアマン 作(評論社)¥1,300

 英国の巨匠マイケル・フォアマンが贈る子どもたちが大喜び間違いなしの楽しいクリスマス絵本。英国で出版されたのが1968年であるから,もう30年以上前の絵本であるが,ストーリー,絵ともに全く古臭さを感じさせない。むしろ,最近のクリスマス絵本よりも現代的という感じがする。原作のすばらしさもさることながら,今は亡き瀬田貞二による訳は本当に見事だ。「大とかいのいちばんたかいビルのてっぺんに,せかいでよりぬきの大どろぼうたちがあつまって,どろぼう大さくせんをたてました。サンタ・クロースをぬすもうというのです。」という冒頭の文章からして,子どもたちをたちまち楽しい物語の世界に引き込んでしまう。この大どろぼうたち,特別設計の大ロケットでサンタを計画どおり盗んだところまではよかったが…。その先は読んでのお楽しみ。ユーモアあふれる結末はいかにも英国的だ。サンタと大どろぼうたちが意気投合する場面では,英国の家庭によくある丸い大きなティーポットで入れたお茶とケーキを皆で楽しんでいる。このシーンもいかにも英国的。大どろぼうの一人一人の表情が実におかしくて楽しい。この本の主役はあくまでも愉快な大どろぼうたちなのである。



■サンタクロースのすてきな道具の絵本

奥井ゆみ子 作・絵(ブックローン出版)¥1,350

 ちょっとほかにはないようなタイトルからして人の目をひく絵本だが,内容も絵もオリジナリティーあふれるすばらしい和製クリスマス絵本。クリスマスに大活躍するサンタクロースは,実は様々な道具を活用して仕事を能率的に行っていた…。サンタクロースが使う秘密の道具をここで全部教えてしまうと,読んでからの楽しみが減ってしまうから,ちょっとだけ紹介してみようか。「サンタがふえる鏡」,「世界のよい子リストマップ」,「煙突探知機」…。どうです,おもしろいでしょう!不思議な道具たちとカラフルでポップでユーモラスな絵が相まって,実に個性的なクリスマス・ワールドが現れる。細かいところの描き方を丹念に見れば見るほど楽しくなってくる絵本だ。第7回ニッサン童話と絵本のグランプリ絵本大賞受賞作品。



■I SPY 3 ミッケ!クリスマス

ウォルター・ウィック 写真/ジーン・マルゾーロ 文/キャロル・D・カーソン デザイン(小学館)¥1,360

 「みんなで あそべるかくれんぼ絵本 ミッケ!」シリーズ全6寒の第3巻。この本の楽しさ,すばらしさを知っていただくためには,本屋で実際に手に取って見ていただくのがいちばんだ。見開き2ページが一つの場面になっており,たくさんある写真の物の中からクイズで尋ねられたものを探していくという趣向だ。たとえば,あるページを開くとそこには人物,人形,動物,クリスマスツリーなどの形をしたクッキーが一面に並べてある。そして,クイズはというと「えんとつのついた おうちをミッケ! クマちゃんの こだいこ タッタカタッタ。 まるまるふとった 3びきのこぶた(このページの作者ではありません)。 11じ7ふんで とまった とけい。…」といった具合。いざ探してみると,「探し物」を全部探すのが結構大変。でも,子どもたちは一つ指定のものを見つけるたびに大喜び!本書が成功しているのは,3人の作者がそれぞれ担当している写真・文・デザインがぴったり合っていることに理由があるだろう。とくに写真については,クイズ本ということを考えなくても,大人が写真だけ眺めて十分楽しめるほど美しく華やかである。とくに,クリスマスのいろいろなオーナメント,おもちゃ,人形,テディベアなどの写真の数々は圧巻!探し物が簡単には見つからないよう1ページにたくさんの物を詰め込んでいるにもかかわらず,少しも雑多な感じがせず,一種のファンタジックな写真集となっているのはデザインの妙によるところも大きいだろう。

 なお,「クリスマス」に限らずこのシリーズの他の巻もすばらしい。英国では幽霊の人気が高いからというわけでもないが,私のお薦めは第6巻 「ゴーストハウス」。ちょっと怖いもの見たさの子どもたちが喜ぶこと間違いなしの一冊である。


■サンタのなつやすみ

レイモンド・ブリックズ 作(あすなろ書房)¥1,300

 ブリックズの代表作の一つで,世界中で人気の高い「さむがりやのサンタ」(評論社)の姉妹作。原題は"Father Christmas Goes on Holiday"で,アニメ「ファーザー・クリスマス」の前半部分に相当するお話。おなじみさむがりやのサンタが夏休みに世界各地のバカンス先で経験する様々なできごとを,ユーモアたっぷりに描いている。もちろん子どもが読んでも大喜びするに違いない楽しい絵本だが,ちょっとシニカルで,「イングランド至上主義的」なところも随所に見え隠れするところは,イギリスが大好きで興味関心がある大人が読んでむしろ楽しめる絵本かもしれない。その見どころを以下に紹介してみよう。

  1. フランス編
     サンタが最初に行くのはグルメの国フランス。ふだん「質素」なイギリスの食生活に甘んじているサンタが思いっきりフランス料理とワインを楽しもうというのだ。ところが,エスカルゴのクリームソース,えびのクリームソース,仔牛の肝のクリームソース…と次々に出てくるクリームソースばかりのこってりしたコース料理に嫌気がさしてしまう。ついに食べ慣れたポテトのフレンチフライ(原作ではチップスとなっているだろう)を所望するサンタであったが,代わりに出てきたのはポテトのソテーであった。イギリスでの必需調味料ケチャップ,ウスターソース,とんかつソース(アニメ「ファーザー・クリスマス」では,イギリスらしく「HPソース」という言い方」がされていた)も,あえなく断られてしまう。こってりしたフランス料理のフルコースでお腹までこわしてしまう可哀想なサンタ。
     朝食では,卵,ベーコン,コーンフレーク,トースト,マーマレード,紅茶のフル・イングリッシュ・ブレックファストをホテルのボーイに要求したものの,出てきたのはコンチネンタル風にクロワッサンとコーヒーだけ。「これがフランスのあさごはんだと?」と嘆くサンタ。すっかりフランスが嫌になってこの地を後にするのであった。作者のブリッグズは相当のフランス嫌いと見た。
  2. スコットランド編
     次にサンタが訪れるのは,「お腹をこわさず水がきれいな」スコットランド。「イングランド人」のサンタにとっては,スコットランドは外国なのである。はじめは,スコットランドの自然や陽気なバグパイプ,そして「ハギスにカブにウイスキーうまいな」と喜んでいたサンタであったが,スコットランドの寒さに耐えかねて(なにしろ「さむがりやのサンタ」なのだから),この地も後にする。
  3. ラスベガス編
     サンタが最後に訪れるのは歓楽の都ラスベガス。イギリスと同様のステーキ,チップス&ケチャップで調子を上げたサンタはカジノもやるが負ける。ダンスショーも見るが,年には勝てず眠くなってしまう。でも,ホテルのプールでゆったりとした楽しい休暇を過ごす。お金が残り少なくなって故郷の「イングランド?」に帰るサンタ。サンタの家の「イングリッシュ・ガーデン」は,留守の間に草が伸びてぼうぼうになっている。でも,やっぱり住み慣れた我が家がいちばんと,お茶とお菓子でティータイムを楽しむサンタであった…。
■サンタクロースとれいちゃん
林 明子 作(福音館) ¥429


 下の子が幼稚園から借りてきたかわいらしいポケット絵本。サンタクロースが待ちきれないれいちゃんとサンタクロースのユーモラスで素敵な出会いを描く。同じ著者の古典的名作「はじめてのおつかい」同様,幼い子どもの気持ちを描いて実に巧みな絵本である。最後のシーンで,ほしかったくまちゃんと一緒にスヤスヤと眠りにつくれいちゃんの姿に子どもたちはほっとすることだろう。



■クリスマス レターつき サンタ・クロースからの手紙
J.R.R. トールキン作/瀬田貞二・田中明子 訳(評論社) ¥2,200




 普通の絵本版サンタ・クロースからの手紙 の「しかけ絵本」版である。本の中には10枚の封筒が貼り付けられており,その中にはトールキンが書いた実際の手紙を複製した「本物」の手紙が入っている。日本の子どもが手紙の内容を理解できるように,裏面には手紙原文の日本語訳がついている。実際に封筒から順番に手紙を出して読んでいくと,トールキンが「今年は子どもたちにどういうサンタ・クロースの手紙を書いてやろうか?」と考えている姿や,トールキンの子どもたちがわくわくしながらサンタ・クロースの手紙を開けている姿が目に浮かぶ。手紙ばかりでなく,封筒に書かれたイラストも楽しい。子どもも,トールキン・ファンの大人も楽しめるしかけ絵本。



■サンタ・クロースからの手紙
J.R.R. トールキン 作/せたていじ 訳(評論社) ¥1,400


 「指輪物語」や「ホビットの冒険」で有名な大作家トールキンがクリスマスに自分の子どもたちに贈った手紙を絵本化したもの。こんな手紙が毎年北極から!?送られてきたら,誰だってサンタ・クロースを信じてしまう。彼の自筆の絵もとても魅力的。ホッキョクグマのアルファベットもあるよ!



■ウェールズのクリスマスの想い出
ディラン・トマス 文/エドワード・アーディゾーニ 絵(瑞雲舎) ¥1,500


 20世紀初頭のウェールズが生んだ夭折の天才詩人ディラン・トマス(1914-1953)は,ボブ・ディランが芸名に使っていることからも分かるように,後の詩人や音楽家に大きな影響を与えた。ディラン・トマスは終生ウェールズ人であることに誇りを持ち,故郷のスウォンジーを離れてからもウェールズのことを忘れることがなかった。この作品も原題は"A Child's Christmas in Wales"といい,わざわざ"Wales"という言葉を入れていることからも,彼のウェールズに対する愛情がうかがえよう。1945年12月にBBCラジオで朗読されたこの作品は,暗く悲惨な戦争が終わって初めてのクリスマスを迎えた英国人に平和なクリスマスの尊さを伝えたことだろう。アーディゾーニ(1900-1979)は「チムひとりぼっち」など数々の名作絵本の製作および挿絵を手がけた。詩人トマスのクリスマスの日の生き生きとした描写と,アーディゾーニの格調高い少しレトロな挿絵が出会っていかにも英国らしい素敵なクリスマス絵本が生まれた。雪玉を投げて火事を消す場面,クリスマス・プディング,ミンス・パイ,ニワトコ酒,パースニップ・ワインなどの食べ物・飲物が登場する場面,子供たちが「幽霊屋敷」の前で「慈しみ深きウェンセスラス王(Good King Wenceslas)」(このページのBGM)を大声で歌う場面などはとくに印象的。



■はやくおきてよサンタさん
マーカス・フィスター(講談社) ¥1,500


 「にじいろのさかな」で日本でも人気の高いマーカス・フィスターのクリスマス絵本。クリスマスプレゼントを配らなければいけない一年でいちばん大切なクリスマス・イブの日に大寝坊してしまったサンタのお話。そりがこわれたり,トナカイがはらぺこで走りたがらなかったり,トラブルに次々と見舞われるサンタ。ついに「プレゼントをとどけられない!」とあきらめてしまうサンタですが…。子供がほっとする素敵などんでん返しがあります。



■ゆき
ユリ・シュルヴィッツ(あすなろ書房) ¥1,300


 ポーランド生れの絵本作家で,寡作ではあるが一作ごとにすばらしい絵本を出してきたシュルヴィッツの最近作。雪の大好きな男の子と雪の日の情景を深みのあるタッチで美しく描いている。灰色の雪空と白い雪の描写がすばらしい。なにげなく登場する魔女のおばあさんとハンプティ・ダンプティがユーモラス。1998年度コルデゴット賞オナー賞と第4回日本絵本賞翻訳絵本賞の受賞作。



■サンタがイブにやってきた
クレメント・ムーア 詩,マイケル・フォアマン 絵(大日本絵画)¥1,700


 サンタ・クロースのイメージを確立させたクレメント・ムーアの有名な詩「クリスマスの前の晩」にマイケル・フォアマンが絵を付けた美しい仕掛け絵本。私はこの本で初めてトナカイたちの名前を知った。それにサンタさんって実は小さいのですね。



■急行「北極号」

C.V.オールズバーグ(河出書房新社)¥1,500

 米国で出版された最高の絵本に与えられるカルデゴット・メダルを受賞した名作中の名作。サンタクロースを信じる主人公の北極への旅。パステルの美しく幻想的な絵は,素晴らしいファンタジーと共に大人の読者をも魅了する。「信じていればサンタのそりの鈴の音が今でも聞こえるんだよ。」というメッセージが,忘れていた子供の頃の純粋な気持ちを思い出させてくれる。長男お気に入りの一冊。子供が大好きな「クリスマス」と「汽車」という2つのものをこれだけ見事に結合させた絵本は他にない。



■サンタをのせたクリスマス電車

ロルフ・クレンツアー 文,ジタ・ユッカー 画(太平社)¥2,000

 たとえ字が読めなくても絵を見ているだけで引き込まれる幻想的な雪の絵。そしてやさしい姿をした子供たち。美しい装飾を施された電車。クリスマスプレゼントにぴったりの絵本である。



■スノーマン

レイモンド・ブリックズ 作・絵(評論社)¥1,600

 アニメーション版も素晴らしいが,多少話が異なっている。原作には明確にクリスマスシーンが出てこない。この絵本に出てくる家や町の様子などがいかにも英国的で,英国滞在の後で見ると何だか懐かしい。アニメーション版ではスノーマンとの交流,サンタとの出会いなどが,朝になってマフラーのプレゼントとして残されているが,こちらの方は主人公の夢だったのだろうか?



■さむがりやのサンタ

レイモンド・ブリックズ 作・絵(評論社)¥1,200

 原題は"Father Christmas"。文字通り「サンタ・クロース」の絵本である。夫が最初に子供に読んでやった時の子供の感想は,「文句の多いサンタだな!」ということだった。本当に,「寒い!」だの「変なところに住んでるな!」だのぼやいてばかりのサンタさんである。人間臭い彼はほんとにほのぼのしている。毎年1日でたくさんの子供達のところをまわらなければならないというのは,ご苦労なことだ。今年からは,この本のようにウィスキーをサンタさんに用意しておいてあげなければいけないようだ。なお,「スノーマン」同様この作品も「ファーザー・クリスマス」というタイトルでアニメ化されている。



■サンタさんへ12のプレゼント!
マウリ=クンナス 作・絵(偕成社)¥1,850


 フィンランドの人気絵本作家による小人のヴッレのお話。彼はサンタのことが大好き。あの手この手でお手伝いをしようとする。でも,失敗ばかり。サンタの暖かい心で大きく包まれているようです。漫画のような絵がお話の内容にぴったり。



■4つのすてきなクリスマス

イヴェィト・トォボー 作・ルシル・ビュテ絵(Libro)¥1,800

 サン・テクジュペリ賞受賞作品。4作品どれも美しい絵と心温まるお話で素晴らしい。私は最後の「7つのサントン人形」が好きだ。クリスマスの料理にされてしまう運命の7匹の動物達が動物をシンボルにもつ守護聖人たちにお祈りし,サントン人形に生まれ変わって救われるというお話。



■ぐりとぐらのおきゃくさま

なかがわりえこ・やまわきゆりこ(福音館書店)¥700

 お料理すること食べることの大好きなのねずみのぐりとぐらが雪の中で大きな足跡を見つけます。はて,誰のでしょう?好奇心の強い彼らはすぐに捜索を開始します。そして…すてきなプレゼントと出会います。



■クリスマスのちいさなほし
オリガ・ヤクトーヴィッチ 作,(福音館書店 こどものとも)¥380


 ツリーのオーナメントたちのお話。割れてしまったガラスの星の代わりにお星さまにお願いする。かわいくレトロなオーナメントたちの絵がいい。



■クリスマスおめでとう
ひぐち みちこ 作・絵(こぐま社)¥1,200


 貼り絵の天使がかわいい。クリスマスの物語をちいさな子供と楽しめる絵本。絵が単純化されていて幼稚園に行く前の子供でも理解しやすい。



■アンパンマンのクリスマス

やなせ たかし 作・絵(評論社)¥1,000

 子供達に絶大な人気を誇るアンパンマン。バイキンマンに捕まったサンタさんを助けるために大奮戦!



■Madeline's Christmas

Ludwig Bemelmans 作・絵(SCHOLASTIC)£5.99

 元気で勇気があるアイドル,マドレーヌのクリスマス。この作品はベーメルマンスの死後に彼のタッチで描かれた作品であるそうだ(最近岩波から出版されたおさるのジョージの新しいシリーズのようである)。話自体は面白いのだが,絵の雰囲気や迫力といった点で,やはり作者自らの手になる昔のシリーズの方がいいような気がする。



■「A Christmas Carol」

Charles Dickens/Eric Kincaid (Illustration), Brimax Books Ltd.

 ディケンズの文はそのままに,Eric Kincaidが全ページにヴィクトリア朝風の挿絵を描いた,当時の雰囲気満点の見て楽しめる「クリスマス・キャロル」。



■「クリスマス・ブックス」

C・ディケンズ 著/小池 滋・松村昌家 訳(ちくま文庫)¥660

 英国のクリスマス,それもちょっとヴィクトリア朝時代の昔のクリスマスに興味がある方は,クリスマス前に是非ディケンズの名作を。よく知られた「クリスマス・キャロル」と,「鐘の音」の2作が収められています。ジョン・リーチが描いた挿絵も当時の雰囲気満点です。



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