Gospel, Standard, Jazz etc.


BGM is "Amazing Grace".




*CD番号は私が買ったときのものです。購入される場合は必ずご自分でチェックしてください。


■THE BEATMAS・XMAS!

(COCB-53123)

 "BEATLES"かと思ってジャケットをよく見たら"BEATMAS"。サンタの衣裳をつけた4人の姿はもちろんビートルズの有名なアルバム「4人はアイドル」(1965年)のパロディー。このグループ,詳しいことはCDの解説にも書いていないが,何でもビートルズのカヴァー・グループとして活躍しているデンマークの4人らしい。そのグループが有名クリスマス・ソングをビートルズの有名曲のアレンジで歌い,演奏しているのがこのアルバム。れっきとしたクリスマス・アルバムであると同時に,ビートルズ・ファンはニヤリとすること間違いなしのパロディー・アルバムだ。こういう趣向に眉をひそめる方もおられるだろうが,ビートルズ風アレンジがツボにはまっていて,歌唱・演奏能力も高いので,私は結構楽しめた口である。リード・ヴォーカルの声や歌い方も若い頃のジョン・レノンにちょっと似ているし…。1曲目の「プリーズ・プリーズ・ミー」風「ジングルベル・ロック」からエンジン全開。最後の曲で唯一グループ・オリジナルの「ア・ベアーン・イズ・ボーン・イン・ビートルホーム」(「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」&「愛こそはすべて」風)まで全12曲一気に駆け抜ける。私のお気に入りは「オール・マイ・ラヴィング」風の「ママがサンタにキスをした」と,「ひとりぼっちのあいつ」風の「聖なる御子」。クリスマス・ソングとしても,ビートルズのナンバーとしても名曲だし,それらが絶妙に融合しているのでまじめに?聴いてもイケます。
 このアルバム,」1995年に一度発売されたが,2003年になって再発売されたとのこと。2003年は「新譜」"LET IT BE... NAKED"が発売されるなど,ビートルズが再び大きな脚光を浴びた年でもあった。このアルバムも,そのブームに便乗した感がないわけではないが,ビートルズが解散後何十年たっても話題になり,「素材」に使われるのは彼らの音楽が偉大な証拠。ジャズ・ミュージシャンがバロック時代の巨匠J.S.バッハに敬意を抱き,バッハのスタイルを演奏に取り入れるのと相通ずるものがあるように思う。



■Love Jazz X'mas

(TOCP-67065)

 東芝のジャズ・コンピレーション・アルバムのシリーズが出したクリスマス・アルバムのタイトルは,"Love Jazz X'mas"。"X'mas"と書くのは誤り,"Xmas"が正しいということは英語をちょっとかじった人なら誰でも知っているのに,天下の東芝がこれではねえ。デザインもあまり感心しない。(下のVerve盤と比べてみてほしい。)
 しかし内容は充実している。全29曲でアーティストも往年の大スター(たとえばナット・キング・コールやビング・クロスビー)から今をときめく小林 桂までバラエティに富んでいるので,さまざまなスタイルの「ジャズ風」クリスマス・ソングが楽しめる。おなじみの曲が多い中で,ジューン・クリスティの「クリスマス・ハート」と「リング・ア・メリー・ベル」の2曲は珍しい。彼女のために書き下ろされた曲だけにレイジーで艶やかな感じがピタリとはまっている。
 意外だったのは大歌手エラ・フィッジェラルドの歌ったトラディショナル・キャロルの"The First Noel"や"O Little Town of Bethlehem"。もっとジャズっぽいくずしかたをするのかと思ったら,伸びのある声でストレートにそして優しく歌っている。大歌手は曲に応じていろんな歌い方ができるんだなあと再認識した次第。



■The Very Best of Christmas Jazz

(UCCV-4020)

 1950〜60年代にかけて数多くの名盤を出した米国の名門ジャズ・レーベルVerve
をはじめとして,Impulse,Deccaなどの音源も加えたクリスマス・コンピレーション。Verveの看板だったエラ・フィッジェラルドの「赤鼻のトナカイ」に始まり,オスカーピーターソンの「ア・チャイルド・イズ・ボーン」に終わる全14曲。歌とインスツルメンタルが約半々のプログラム構成だが,演奏するのはいずれもビッグなアーティストばかりの豪華さだ。
 私のお気に入りは,歌ではジョー・ウィリアムスの「レット・イット・スノウ」,メル・トーメの「ザ・クリスマス・ソング」。しっとりした歌と声が耳に心地よい。インスツルメンタルでは,「グリーンスリーヴス」をソプラノ・サックスで吹くジョン・コルトレーンのアドリブはさすがだし,「サンタが街にやってくる」での粋なくずしかたはビル・エヴァンスならでは。
 ジャズのアルバムではジャケット・デザインも重要な要素。その点このアルバムのデザインはかわいらしくて洒落ている。さすがはVerveといったところだろうか。


■Kenny G・miracles  The Holiday Album

(BVCA-853)

 フュージョン・ミュージックよりも昔ながらのジャズをこれまで主に聴いてきた私にとって,サックスといえばアルト・サックスあるいはテナーサックスであり,ソプラノ・サックスはあまり聴いてこなかった。本来はテナーの奏者であるジョン・コルトレーンが生涯にわたりソプラノ・サックスで愛奏した「マイ・フェイヴァリット・シングス」などは非常に有名であるが,これはむしろジャズの世界では例外的なことだろう。しかし今やフュージョンの世界ではサックスといえば,まずソプラノ・サックスを指し,このトレンドをつくったミュージシャンこそ1957年シアトル生まれのケニー・G(Kenny Gorelick)ということらしい。
 このアルバムは1980年代以降ずっとソプラノ・サックスの第一人者であるケニー・Gが1994年に発表した初のクリスマス・アルバム。全米では発売後第1週でビルボード第1位になったというのだから,アメリカでの彼の人気ぶりがうかがえる。「ホワイト・クリスマス」,「きよしこの夜」,「リトル・ドラマー・ボーイ」などのポピュラーなクリスマス曲が中心の選曲。全曲聴き終わって私がまず感じたことは,ソプラノ・サックスの音っていいもんだなあということ。もちろん名手が吹いているのだし,私がふだん聴いている1950〜60年代のジャズに比べて録音も格段によいのだけれども,それにしても耳に心地よい音だ。ウキウキ,ワクワクしてくるクリスマス・アルバムというよりは,「癒し系」のしっとりしたクリスマス・アルバム。ソプラノ・サックスにしては音が低いぞと思ったら,「ハブ・ユアセルフ・ア・メリー・リトル・クリスマス」と「シルヴァー・ベルズ」で彼はテナー・サックスを吹いているのだった。そしてそのテナーの音もまた実によいのだ。どの曲の演奏も見事だが,1曲だけあげろと言われたらタイトル曲でもある彼オリジナルの哀愁漂う「ミラクルズ」だろうか。



■Healing Gospels -Premium-

(WEA WPCR-11390)

 2002年10月発売のヒーリング・ゴスペル・シリーズ第5弾の最新盤。全16曲収録で,第4弾のアルバムとダブっている曲も少しだけあるが,損した気は全然しない。第4弾の"Healing Gospels -Joy-" 同様,第一線で活躍するソロ,クワイアーのソウルフルなゴスペルがたっぷりと聴ける。どちらかというと,"Healing Gospels -Joy-"よりも,シンプルなナンバーが多いといったらよいであろうか。このシリーズ,クリスマス向きのナンバーが入っているといっても,もちろんいつ何時聴いても元気をくれる歌がいっぱい。これがゴスペルのよさ,すばらしさ!



■Healing Gospels -Joy-

(WEA WPCR-11087)

 2001年8月発売のヒーリング・ゴスペル・シリーズ第4弾。私にとっては,何といってもアンドレ・クラウチの"Nobody Else Like You"が入っているのがうれしい。最後の曲としてサイモン&ガーファンクルの大名曲「明日に架ける橋」を日本のグループが歌っているのに少し驚き。アップテンポの活気のあるナンバーあり,しっとりと聴かせるナンバーありで,最初から最後まで聴く者を飽きさせない全15曲のオトクなコンピレーション・アルバムである。自分も歌ってみたいなという気にさせてくれる曲が必ずあるはず。



■John Denver・Christmas in Concert

(RCA 07863 68043-2)

 1996年12月19〜20日に,ジョン・デンバーがワシントンのD.A.R. Constitution Hallで行ったクリスマス・コンサートを収録したライヴ盤。少年少女合唱団との息もぴったり合っている。"Jingle Bells"で子どもだけで歌うべき箇所で間違って入ってしまい,思わず自分で笑ってしまうデンバーなど,ライヴならではの微笑ましい光景も収録されている。最初から最後までデンバーのテンションは衰えることを知らない。どの曲でも一切手抜きはなし。アップ・テンポの曲とスロー・テンポの曲,楽しげに聴かせる曲としっとりと聴かせる曲を織り交ぜ,聴く者を飽きさせることがない。カバー曲もすばらしいけれども,デンバー・オリジナルの"Christmas Like a Lullaby","A Baby Just Like You","Annie's Song","Calypso","Falling Leaves"はとりわけ心に残る。キャロルが好きな方には,英国の古謡「グリーン・スリーヴス」のメロディーを使ったキャロル"What Child This?"やアダム作の名曲"Oh Holy Night"でのデンバーの心のこもったすばらしい歌いぶりも聴いてほしい。このすばらしいクリスマス・コンサートからわずか10ヶ月後の1997年10月に飛行機事故で彼が亡くなったことはあまりにも痛ましい。このコンサートでも熱唱している出世曲"Take Me Home, Country Roads(故郷にかえりたい)"のごとく,ウェスト・バージニアの故郷へとかえり急いでしまったのだろうか。誰も彼の声と歌いぶりを真似することはできないし,代わりを務めることもできないのに。



■John Denver・Christmas Like a Lullaby

(LASERLIGHT 12762)

 ジョン・デンバーがポピュラーなキャロルやソングを歌ったクリスマス・アルバム。彼の澄んだ声はクリスマスの歌にぴったり。どの曲でも,アコースティック・ギターや木管を中心としたフォーク・カントリー・スタイルのアレンジをバックに,素直にストレートに歌っていることが,曲とデンバーの声そのもののよさをひきたてている。彼が悲劇的な飛行機事故で亡くなったからではないのだが,デンバーの歌うクリスマス・ソングにはどこか透明な悲しみを感じさせるものがある。それはアルバム・タイトル曲で彼オリジナルの"Christmas Like a Lullaby"を聴いただけで明らかだ。トム・パクストンの"The Children of Bethlehem"やジェスター・ハーストンの"Mary's Little Boy Child"の抒情にも胸打たれる。あまりにも有名な"White Christmas"や"Blue Christmas"もデンバーならではの声の伸びがすばらしい。"Jingle Bells"や"Rudolph, the Red-Nosed Reinder"といった子供向けの?クリスマス・ソングもデンバーが歌うと一味違う。英国でも人気のある"Little Drummer Boy"は遅めのテンポでしっとりとした歌いぶり。アルバム全体を通してデンバーならではの個性が感じられる「手抜きのない」つくりに感動した1枚。



■John Denver & The Muppets・A Christmas Together

(LASERLIGHT 12761)

 アメリカの子どもに人気のマペッツと今は亡きジョン・デンバーが組んだ楽しいことこのうえなしのクリスマス・アルバム。デンバーとマペッツのキャラクターがおもしろい声で次々と歌い継いでいく,最初の"The Twelve Days of Christmas"を聴いただけで,子どもは大喜び!"Deck the Halls"なんかもおかしい。しかし,これは決しておかしくてユーモラスなだけのクリスマス・アルバムではない。"The Peace Carol"やデンバー,オリジナルの"A Baby Just Like You"では,デンバーのしみじみとした歌唱が感動を誘う。マペッツと有名ミュージシャンが組んだアルバムはたくさん出ているらしいのだが,クリアーな声のデンバーと芸達者なマペッツのコンビは,真に子どもにも大人にも楽しいクリスマス・アルバムを作りあげた。アレンジがよいことも成功の大きな要因のひとつ。アルバムの最後は"We Wish You a Merry Christmas"を皆で楽しく歌ってハッピー・エンド!



■Johnny Cash・Country Christmas

(LASERLIGHT 15417)

 カントリーの大御所ジョニー・キャッシュがクリスマスのトラディショナル&スタンダード・ソングを歌ったアルバム。キャッシュ自信の独特のうなるようなバリトン・ボイスもいいのだけれど,このアルバムではそれ以外でおもしろいところがいくつかあって気に入ってしまった。たとえば"Figgy Pudding" ("We Wish You a Merry Christmas")では,バックに「おばさん」の"Merry Christmas!"とか"Hooray!"とかいった叫び声が執拗に入っていて,メインのメロディーがかすんでしまうほど,とてもおかしい。夫婦で何度も繰り返し聴いて大笑いした。私の入っているサークルの出し物にしたいようなアレンジだ。"Away in a Manger"では,キャッシュの歌う曲は有名なマレイのメロディーなのに,カントリー・ヴァイオリンで奏される前奏と間奏は,なぜかスピルマンのものなのだ。要するに二つの"Away in a Manger"をくっつけているのだが,それが妙にマッチしている。ジョニー・キャッシュという人はポピュラーな曲を歌うときでも,アレンジにひとひねりするのが好きなようだ。ジャケットの顔写真を見ても,この人にはちょっとひねたニヒルなところがあるのかと勝手に想像してしまうが,太く力強い歌唱には心にストレートに訴えかけるものがある。

*ジョニー・キャッシュは2003年9月12日71歳にて死去


■Elvis Presley・It's Christmas Time

(LASERLIGHT 21717)

 どんなに録音が古くても,スタイルが今風でなくとも,エルビス・プレスリーの歌はやはりすばらしい。耳タコの"Silent Night"や"White Christmas"でも,これだけ艶やかな声で歌われると聴き入ってしてしまう。キャロルとしては甘過ぎて,いつもは聴かないアメリカ・バージョンの方の"O Little Town of Bethlehem"も,これほど甘い声で歌われると逆に脱帽だ。"If Every Day Was Like Christmas"や"Mama Liked The Roses"にも,クリスマス・ソングとかそういうことを別にしてうっとりしてしまう。世紀の大歌手と呼ばれる人はどんな歌を歌ってもスゴイんだなあということを改めて感じさせられた1枚。



■Amy Grant・Home For Christmas

(A&M 31454 0001 2)

 16歳でゴスペル・シンガーとしてデビューし,今やアメリカを代表するポップ・シンガーの一人として活躍しているエイミー・グラントが1992年発表したクリスマス・アルバム。彼女の声はマヘリア・ジャクソンのように圧倒的な力強さと深さを持ったものではないけれども,優しい美しさが光っている。このアルバムには,「もろ人こぞりて」や「神の御子は今宵しも」のような昔からのキャロルと彼女のオリジナル・ソングが併せて収められている。どの曲でもいかにもクリスマスといった感じの明るく伸びやかな歌が素敵だ。



■Willie Nelson・Pretty Paper

(COLUMBIA CK 36189)

 カントリー・ミュージック界の大御所,ウィリー・ネルソンのクリスマス・アルバム。アルバム・タイトルともなっているオリジナルの有名曲「Pretty Paper」に加えて「ジングル・ベル」,「赤鼻のトナカイ」,「ホワイト・クリスマス」などスタンダードがいっぱい。カントリーの大歌手と古典的なクリスマス・ソングがどうも結びつかない気もするのだけども,さすがに彼の声と歌い方は風格がある。セロニアス・モンクの「切手のモンク」のアルバムではないが,顔写真の切手とリボンを配したカバー・デザインも印象的。



■Mariah Carey・Merry Christmas

(COLUMBIA 7464-64222-2)

 私が入っている幼稚園のゴスペル・サークル が園のクリスマス誕生会で"Santa Claus Is Comin' To Town"を歌うことが決まってからは,マライア・キャリーのこのアルバムのカセットを毎日車の中で聴いていた。それというのも,このアルバムには,この曲のあまりにもすばらしい演奏が入っているからである。メインのマライアだけでなく,バック・コーラスも超一流なのは言うまでもない。どうやったらこのアルバムのように,弾むようなリズムで"Santa Claus Is Comin' To Town..."というサビのフレーズを歌えるのだろうかと思った。このアルバム,"Silent Night"や"O Holy Night"のようなトラディショナルな曲もマライアが歌うと一味違うし,しっとりした名曲"Jesus Born On This Day"での彼女の歌いぶりは何度聴いても感動する。全10曲しか入っていないのがちょっと残念。マライアの声で聴きたいクリスマス・ソングがまだまだあるのに…。



■セリーヌ・ディオン/スペシャル・タイムス

(EPIC ESCA7390)

 「タイタニック」の主題歌を歌って一躍スターとなったセリーヌ・ディオンが,直後の98年に出したクリスマス・アルバム。トラディショナルやスタンダードの曲に,彼女のための新曲6曲が加わり,全17曲ものゴージャスなアルバムとなっている。マライア・キャリーのメリー・クリスマスが全10曲,40分弱しかないのと比べると何だか少し得した気分!(声や歌い方は,やっぱりマライア・キャリーの方が私は好きだけれども)。1曲目に"O Holy Night"を持ってきたのは,大先輩マライア・キャリーが同じく「メリー・クリスマス」でこの」曲を歌っていることをセリーヌが意識したのではないか。聴き比べてみると,2人の歌のスタイルがまるで違っているのがおもしろい。フランスのフォーク・キャロル"Les Cloches Du Hameau"を最後の方にもってくるあたりも,フレンチ・カナディアンとしての彼女のアイデンティティーの現れではないだろうか。新曲の中では,やはりアルバムのタイトルにもなっている"Theres Are The Special Times"がいい曲である。
 余談であるが,2002年秋にディズニーのアニメ「美女と野獣が」DVDで発売された。久しぶりにこの作品を見たが,ここで主題歌を歌っているのがセリーヌ・ディオンである。アカデミー最優秀主題歌賞を受賞しただけあって,すばらしいディズニー・アニメーションに花を添える感動的な曲と歌唱であった。



■The Essential Mahalia Jackson

(Metro METRCD034)

 1911年に生まれ1972年に亡くなったゴスペルの女王マヘリア・ジャクソンが,アポロ・レコード時代(1946−1954)に残した全盛期の録音から選ばれた全22曲を収録。マヘリアが最も脂の乗っていたときのものだけに,張りのある声,パワー,心のこもった歌いまわしは本当に素晴らしい。たとえば,あまりにも有名な「アメイジング・グレイス」の最初の部分だけ聴いても,マヘリアのように歌える人は誰もいないのではないかと思えてくる。録音はもちろん後のコロムビア時代の方が良いけれども,私自身はアポロ時代のマヘリアの方が好きである。



■マヘリア・ジャクソン:ゴスペル,スピリチャルズ&ヒムズ

(SONY SRCS 5649-50)

 マヘリア・ジャクソンが1954年にコロムビア・レコードと契約以来,同レーベルに残した多くの録音から全36曲を選曲した2枚組のベストアルバムである。全80ページあまりにわたって,日本語によるマヘリアの経歴,曲目解説,原歌詞と対訳がついているので,マヘリア・ジャクソンという世紀の大ゴスペル・シンガーの入門には最適のアルバムであろう。収録曲の中には,上で紹介したアポロ・レコード時代に録音した曲の再録音にあたるもの,たとえば,「もう少し上へ "Move on up a little higher"」や「上なる部屋で "In the upper room"」もあって,アレンジや歌い方の違いを聴き比べるのも楽しい。総じてこのコロムビア時代は,若かったアポロ時代よりもパワーがやや落ちた分,歌いまわしで聴かせるスタイルに変化している。その点日本の大歌手美空ひばりと同じか!?



■グレイト・ゴスペル・ソングブック 〜ゴスペル名曲集

(P-Vine PVCP-8198)

 クリスマスにゴスペルのスタンダードと呼ばれる曲を聴いてみたい,歌ってみたいというときにぴったりのアルバム。このアルバムの原盤はゴスペルの名門レーベルとして著名な米ヴィー・ジェイで,収録されているナンバーは50〜60年代に活躍したクワイア(聖歌隊)やグループがこのレーベルに録音したものからすべて選ばれている。つまり,現在のミュージシャンが企画物としてゴスペルのスタンダードを歌ったのとは違って,本当の意味でゴスペルのスタンダードのルーツに触れられるアルバムなのである。古い時代の録音であるから,アレンジはごくシンプルだが,それだけにかえってソウルフルな熱い歌をダイレクトに感じることができる。マヘリア・ジャクソンばかり聴いていた私がクワイアやグループによるゴスペルの素晴らしさを初めて知ったアルバムである。今や古典ともいえる全21曲の名曲と演奏がたっぷり楽しめる。



■スーパースター・クリスマス

(SONY SICP 24)

 文字通りスーパースター・アーティストが歌うクリスマス・ソングを全21曲,78分余りも収録したCD。1曲目ジョン・レノン&ヨーコ・オノの「ハッピー・クリスマス」から,最後ワム!の「ラスト・クリスマス」まで,錚々たる大物アーティストの歌う名曲が目白押し。とても1曲ずつの紹介はできない。ちょっと変わったところでは,クラシック・オペラ界のスター,プラシド・ドミンゴが歌う「ホワイト・クリスマス」や,エチオピア難民の救済のために結成されたバンド・エイドが歌った「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」なんかも入っている。このアルバムの欠点があるとすれば,スーパースターの有名曲ばかりをたくさん収録したせいで,内容が詰まり過ぎているというか,息抜きできるところがないということだろうか。でも,お買い得感満点のクリスマス・アルバムなのは間違いない。



■たのしいクリスマス Merry Christmas

(COLUMBIA COCC-11998)

 私はふだんクリスマス・キャロルやクリスマス・ソングを日本語で聴くことはほとんどない。オリジナルが英語の歌なら,英語のまま欧米の上手な歌手や合唱団で聴いた方がいいに決まっている。日本の「讃美歌集」にも,英語のキャロルを日本語に訳したとき,残念ながら音楽自体の流れが不自然になってしまった例がいくつもある。ところが子どもが幼稚園に行くようになって,私も少し考えを改めた。この年齢くらいの子どもがクリスマスの歌を楽しく歌ったり聴いたりするためには,「日本語訳」のクリスマス・ソングがやはり必要である。CDを聴くときも,子どもには,上手な大人の歌手が一人で歌ったものよりも,(たとえ音が多少はずれていたとしても)元気いっぱいの児童合唱団が歌ったものの方がいいみたい。親近感を感じるのだろうか…。そうした「条件」をほぼ満たしているこのCDには,「日本語訳」クリスマス・ソングの定番,「ジングル・ベル」,「赤鼻のトナカイ」,「サンタが町にやってくる」,「ママがサンタにキスをした」,「きよしこの夜」などに加えて,新しいところでは「ファーザー・クリスマスよりPoor Old Father Christmas」が入っている。欧米生まれのクリスマス・ソングにまじって数少ない日本生まれのクリスマス・ソング,小林亜星作曲の「あわてんぼうのサンタクロース」は,幼稚園でも子どもに大人気の歌。こういう曲がもっとあってもよいのにと思う。



■A GOSPEL CHRISTMAS

(Joker CD 39086)

 クリスマス向きのゴスペル・ソングを16曲収録したアルバム。ソロもクワイアーもあるが,何と言ってもすばらしいのは,私がゴスペルを好きになったきっかけとなった史上最高のゴスペル・シンガー,マヘリア・ジャクソンの歌う7曲。すべて第二次大戦前のモノラル録音だが,1曲目の「きよしこの夜」からして,その歌唱力に圧倒される。「チャイルド・オブ・ザ・キングズ」や「イット・ペイズ・トゥー・サーヴ・ジーザス」の深々とした声を聴くと,ゴスペルが本当に魂の音楽であることを実感する。マヘリアのほかにも,バイブル・シンガーの歌う大名曲「オー・ハッピー・デイ」,「聖者の行進」や,タミー・マッキャン&ザ・グランド・ヴォイス・オブ・グローリー・コーラスの歌う「グローリー・グローリー・ハレルヤ」はクワイアーのよさを存分に楽しませてくれる。ルイ・アームストロングの「誰も知らない私の悩み」も歴史的な古い録音ながら,心に切々と迫る歌唱。



■BLUE CHRISTMAS

(DigiMode GPX 2575)

 このクリスマス・コンピレーションで嬉しいのは,史上最高のゴスペル・シンガー,マヘリア・ジャクソンの歌う古典的キャロルの名曲,「ああベツレヘムよ」,「まぶねの中で」,「みつかい歌いて」,「天にはさかえ」が入っていることである。マヘリアが歌っている「ああベツレヘムよ」と「まぶねの中で」は,私の好きな英国の曲ではなくアメリカの曲の方であるが,ゴスペルはアメリカのものだから仕方ない。(英国とアメリカのキャロルの違いについては,「同詞異曲のクリスマス・キャロル」を参照してください) 。それにしても,マヘリアは何をうたってもやっぱりスゴイ。こんなに心に迫るアメリカ版「ああベツレヘムよ」は聴いたことがない。そして,グリーン・スリーブスのメロディーによる「みつかい歌いて」では,英国の古楽の歌手も真っ青の絶唱を聴かせる。少し食傷気味のメンデルスゾーン作曲「天にはさかえ」も,彼女が歌うと,輝かしいゴスペルになってしまう。私の好みでマヘリアのことばかり書いてしまったが,アルバム・タイトルにもなっているプラターズの「ブルー・クリスマス」,ルイ・アームストロングの「ホワイト・クリスマス」など歴史に残る名唱が数多く収録されている。バラエティーに富んだ選曲と歌手陣で最初から最後まで楽しめるクリスマス・アルバムである。



■天使にラブ・ソングを オリジナル・サウンドトラック

(AVCW-13034)

 長らく廃盤だった「天使にラブ・ソングを」「天使にラブ・ソングを 2」のオリジナル・サウンドトラック盤が2001年に再発売された。「天ラブ」ファンには朗報であろう。パワーの塊みたいなデロリス(ウーピー・ゴールドバーグ)と,個性的なシスターたちやちょっとドジで妙に敬虔なギャングとのからみが抱腹絶倒ものの「天使にラブ・ソングを」は,もちろんコメディーとしても映画史上に残る第一級の作品だが,そこで使われているゴスペル・ミュージックもきわめて水準の高いものである。映画を見ている時にはいいなあと思っても,サウンドトラック盤だけ聴いてみると,そうでもないなあと思うことがよくある。でも,この盤についてはそんな心配はご無用。この映画を見てゴスペルファンが増えたというのも頷ける。「マイ・ガイ」の軽快な楽しさ,このページのBGMに使っている「アイ・ウィル・フォロー・ヒム」の静から動への鮮やかなチェンジなど,何回聴いても楽しい。



■天使にラブ・ソングを 2 オリジナル・サウンドトラック

(AVCW-13035)

 「天使にラブ・ソングを 2」では,デロリスの「共演者」がシスターたちから高校生の生徒へと変わる。そして,この高校生たちの歌が若々しくて元気いっぱいでしかもうまい!「天使にラブ・ソングを」とはまた違ったスタイルでゴスペルを味わせてくれるのもこのサウンドトラック盤の大きな魅力。デロリスが巧みな指導で生徒たちにやる気を出させるきかっけを作ったときの古典的ナンバー「オー・ハッピー・デイ」や最後のコンテストのシーンで歌われた「ジョイフル・ジョイフル」は感動的である。「ジョイフル・ジョイフル」でも澄んだ声をホールいっぱいに響かせたローリン・ヒルは,「主は雀を見守り給う」でもターニャ・ブラントとの素晴らしいデュエットを聴かせている。「天使にラブ・ソングを」と同様,「音楽だけ聴いて楽しめる」クリスマスにぴったりのサウンドトラック盤。



■GOSPEL IN CHRISTMAS From Mama, I Want to Sing

(meldac MECA-20009)

 1983年のニューヨーク初演以来,ロンドン,ドイツ,イタリア,ジャマイカ,オーストラリアなど世界中で大ヒットとなったゴスペル・ミュージカル「ママ・アイ・ウォント・トゥ・シング」のアルバムから,クリスマス向きの曲を編集したスペシャル盤である。このミュージカルは,「ジャスト・ワン・ルック」のヒットで知られるR&Bシンガー,ドリス・トロイの半生を描いたもの。日本でも1988年以来何度も再演されてゴスペル・ファンの熱烈な支持を受け,映画「天使にラブ・ソングを」「天使にラブ・ソングを2」と共に,日本のゴスペル・ブームの火付け役を果たした意義は大きい。洗練されたアレンジのモダン・ゴスペルのスタイルと,ゴスペル本来の力強く熱い歌唱がマッチした絶妙の楽しさに,全10曲があっという間に終わってしまう。私は古典的大名曲の"Mary, Don't You Weep"と"Precious Lord",「天使にラブ・ソングを2」でも歌われていたおなじみの"Oh, Happy Day",しみじみとした"I Don't Worry About Tomorrow"などがとくに気に入っている。主役のドリス・トロイはもちろんのこと,他のシンガーたちの歌もすべて元気いっぱい。こちらまで元気が出てくる。元々は同じ曲でも,アレンジや歌手によって全然違った音楽になるのもゴスペルを聴く大きな楽しみの一つ。



■中島みゆき:「心守歌」

★かずし推薦スペシャル盤!
(YAMAHA MUSIC CORPORATION YCCW-00029)

 この中島みゆき2001年秋リリースのアルバムには,中島みゆきが大好きな我が家の小学生かずし推薦のクリスマス・ソング"LOVERS ONLY"が最後に収録されている。オーケストラと鈴のゴージャスな伴奏と,さびの部分の"Merry Xmas, Merry Xmas..."のリフレインが,いかにもクリスマスといったハッピーで明るい気分を盛り上げる素晴らしい曲である。しかしクリスマス・ソングでも,メロディーライン,歌いまわしは,あくまでも中島みゆきである。このアルバムには,他にも「六花」や「ツンドラ・バード」のように北国の冬の情景を歌ったジーンとくる曲が収められており,"LOVERS ONLY"も含めて札幌出身の中島みゆきが北海道の雪景色を懐かしく思い出しつつこれらの曲を書いたのではないかと私には思えてくる。(もしかして北海道の「六花亭」のお菓子も思い出したかもしれないが…)。タイトル曲「心守歌」を含めて,11曲すべての完成度が高い中島みゆきならではの傑作アルバム。



■A Celtic Christmas

(SAYDISC CD-SDL 417)

 「ケルトのクリスマス」という,ケルト好きな人にとってはいかにも興味をそそられるタイトルのCD。「ブルターニュ,コーンウォール,アイルランド,マン島,スコットランド,ウェールズの冬の儀式と伝統」という副題がついている。スコットランドといっても,ここでのスコットランドはスカイ島やシェトランド諸島といったケルトの残る辺境。演奏陣は,男性,女性のボーカリストに加え,ウェールズのケルティック・ハープ,ウェルシュ・トリプル・ハープ,アイリッシュ・パイプ,スコティッシュ・ハイランド・パイプ,スコティッシュ・スモール・パイプ,ウェルシュ・バグパイプ,ブレトン・バグパイプ,ボドフラン…など,珍しい民俗楽器が大活躍。辺境のケルトの地に伝わるローカルなクリスマス・ソングばかりだから,日本でよく知られている曲はひとつもない。底抜けに明るいダンサブルな曲がある一方で,ポルトガルのファドのようなしみじみとした哀愁のある歌もある。標識ではお目にかかるが,実際にはまず聴く機会のないウェールズ語で歌われる歌(英語対訳がちゃんとついている)も何曲か入っているが,どこか悲しげな歌が多いのは,イングランドに征服されたウェールズ人の悲哀が流れているためだろうか。英国の人には,イングランドのメジャーなクリスマス・キャロルだけでなく,このような珍しいローカルなクリスマス・ソングも後世に残していってほしいものだ。


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