同詞異曲のクリスマス・キャロル

キャロルでも我が道を行く英国


 このページのBGMは"Once in royal David's City (1849)"(日本では「ダビデの村の」;讃美歌第469番)です。作詞はアイルランド人の女性C・F・Alexander(1818-1895)。作曲者のH・J・Gaunett(1805-1876)はシュロップシャー生まれの英国人で,この曲は最も美しい生粋の英国キャロルの一つといえるでしょう。Bath Abbeyにおけるクリスマス・イヴのキャロル・サーヴィスの冒頭で,この曲が合唱団と参列者全員によって歌われたときの感動は今だに忘れることができません。
 しかし,この曲が2001年のヤマザキのクリスマスケーキのテレビCM(松たか子出演)に使われていたのにはびっくり!そして今年も同社のCMにはこの曲が使われていますね。日本ではあまり知られていない英国キャロルをクリスマス時期の重要なCMに用いた同社の「選択眼」に敬意を表します。


 聴こうと思ったクリスマス・キャロルをいざ聴いてみると,曲名は同じはずなのに,自分が思っていたのと違う曲が流れ始めて戸惑ったという経験はないでしょうか。こういうことが起こるのも,同じ歌詞に別の作曲家が別の曲をつけたキャロルが少なからずあるからです。私は英国滞在中に,とくにこのことを多く経験しました。それというのも,英国には,アメリカや日本でポピュラーなキャロルとは「同詞異曲」のキャロルがたくさんあり,そちらの方がむしろポピュラーとなっているためです。この中には,自国の古いキャロルだけではなく,アメリカのキャロルの後に作曲されたむしろ新しい曲や,英国人以外の作曲家による「外国曲」もあります。キャロルの世界においても,英国は自国の独自性を強く主張しているかに見えます。その「英国独自のキャロル」というものがどんなものか,いくつかのキャロルについて実際に自分の耳でぜひ確かめてください。さらに,これ以外のすばらしい英国オリジナル・キャロルにも親しんでいただければ幸いです。

Angels from the realms of glory
Away in a manger
It came upon the midnight clear
O little town of Bethlehem
While shepherds watched