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第1回 『ゲームミュージックって何?』
 『ゲームミュージック』という言葉を聞いてから久しくなります。ファミリーコンピュータが発売された頃、私はゲームをしている最中に流れる音楽にはあまり耳を傾けてはいませんでした。同時発音数の少なさ、それゆえのアレンジの貧困さ、そしてあの耳に付く音……。音楽がうるさくて(決してボリュームが大きかったわけではないが)、テレビのボリュームを0にしていたこともありました。ただ、それでは少し味気ないので、変わりになる音楽を選曲して流していたこともあります。
 そんな私のゲームミュージックに対する見解を変えたのは、「スーパーマリオブラザーズ」と「ドラゴンクエスト」でした。特に「ドラクエ」は、少ない同時発音数にもかかわらず、その範囲でできる最高のアレンジがなされていたと思います。
 あれから10数年、ゲーム音楽も『ゲームミュージック』として認知され、様々なゲームのサウンドトラックCDが発売されています。
 ところで、そのゲームミュージックなのですが、『ゲームミュージック』というジャンルの音楽があると勘違いされている方が多いように思われるのです。というのは、ゲームサウンド・ディレクター科の体験入学参加者や、入学生などと話をした時に、「ゲームミュージックを作りたい」と言われるのですが、「じゃあ、ゲームミュージックって何?」と問い返すと言葉が出ないのです。これはなぜかというと、たぶん皆さんの中では『ゲームミュージック』というジャンルの音楽があると思っているからなのです。そして、「○○○○というゲームの音楽みたいな曲が作りたい」と思っているのです。『ゲームミュージック』というジャンルは確かにあります。しかしそういったジャンルの音楽というものは、実はないのです。
 「えっ?」と思った方もいると思います。ではここでゆっくり考えてみて下さい。例えば「グランツーリスモ」ではロック、フュージョン、AORといったジャンルの曲が使われています。「IQ」では交響曲、「デコトラ伝説」では演歌、「パラッパラッパー」ではラップ……。つまり『ゲームミュージック』とは、この世のあらゆるジャンルの音楽を含んでいるのです。これは『映画音楽』も同じです。映画音楽は、その時々の映像のイメージをより印象付けたり、登場人物の心理をより明らかにしたりと、常に映像とマッチすること、あるいは相乗効果を考えて作られています。そう考えると、ゲームミュージックは映画音楽とおなじアプローチで作らなくてはならないのです。
 最近、ゲームミュージックの質がまた良くなってきました。これは、ゲーム会社のサウンドクリエイター以外に、プロのミュージシャンが曲作りをしているゲームが以前より増えてきているからなのです。ゲームは日本の輸出するメディアの中では最大のものであることを考え、ゲームクリエイターもより良いゲームを世に送り出そうとしています。ゲームサウンド・ディレクター科ではその点を重視し、生徒全員に音楽に対する広い視野を持ってもらえるよう、授業を進行しています。