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第10回 『音楽のジャンルA』 ― オーケストラ ―
  [ 「ハードロック」と「ヘビーメタル」の違いとは? ]
 曲のジャンルを区別する言葉に「ロック」や「ポップス」などという言葉があります。単純に、こういった言葉で音楽のジャンルを分けることはできるのですが、より明確にするため、同じロックでも「ハードロック」「ヘビーメタル」「グランジ」「デジタルロック」「サザンロック」「ビートロック」「プログレッシブロック」などなど、細分化されていて複雑怪奇です。特によく質問されるのが、『「ハードロック」と「ヘビーメタル」の違いは何ですか?』というものです。これには色々な説もあり、一概に『こうです!』と言いにくいのですが、『ファッションの違いだよ』と私は答える場合があります。これについては、またあらためて書くことに致しましょう。

  [ “J−○○”って? ]
 前号の最後のお話で、『ジャパニーズロック』という表現を使いました。同じように、『J-POP』などという言葉もあります。これは単純に『日本のポップス』ということなのですが、最近妙な言葉を聞くことがあります。そのジャンルとは『J-クラシック』です。直訳すると『日本のクラシック』。これっていわゆる『邦楽』ではないの?と思うのですが、そうではありません。『日本人の作曲したクラシック』ということなのです。
 この『J-クラシック』という言葉は、どうやら坂本龍一の「energy flow」がヒットしたため出来上がった造語だと思います。
 ところがです。そもそも『クラシック』というジャンルは西洋音楽にのみ存在するもので、しかもそれは古典音楽にのみ言えるものです。なので、今作曲されたものにそのジャンルをあてがうことは疑問です。しかも『J-クラシック』なんていう、訳のわからない言葉で表現するのも納得できません。

  [ オーケストラとクラシック ]
 それもあってか、最近DTMでオーケストレーションを再現したいと思われる方が増えてきているように思います。ただその中に、DTMで管楽器や弦楽器などの音を鳴らし、オーケストラのアレンジを施すと、それがクラシック音楽になる、と勘違いしている人もいます。何もオーケストラがクラシックな訳ではないのです。例えば「スーパーマン」「E.T.」「スターウォーズ」などの映画のテーマ曲などはオーケストラで演奏していますが、クラシックではないですよね。ちなみにそれらの曲の作曲者はジョン・ウィリアムス(その息子はジョセフ・ウィリアムス、TOTOの3代目ヴォーカリストです。『グランツーリスモ』のエンディングテーマのヴォーカルとしてゲームファンもおなじみ……かな?)、演奏は「ボストン・ポップス・オーケストラ」という交響楽団です。つまり、オーケストラとは演奏する形態の名称であって、いわゆるバンドと同じなのです。ただ、何のジャンルの音楽を演奏するかが違うだけなのです。

  [ オーケストラらしさの表現 ]
 オーケストレーションで楽曲を表現する際に注意しなければならないことは、まずアレンジをする時に、それぞれの楽器の特徴や特性を考えることです。バイオリンやトランペットなど、今までそばで演奏しているのを聴いたことがない、また、自分では演奏することのできない楽器をシーケンスデータでシミュレートしなくてはならないのです。なので、一朝一夕にマスターできるものではありません。でもここが一番大事なことなのです。ギターやベースなどと同じく、決して現実にできない演奏をコンピュータで実現させることはリアリティを欠くことになってしまいます。これらについては授業で教授しています。
 次に楽器の配置です。楽器の定位(PAN)をどのように設定するかについて、これ、という限定されたものはありませんが、代表的なものはいくつかあります。これを研究しなくてはいけません。自分がアレンジする時に、どんな楽器をどれぐらいの数使うかで、オーケストラの規模が決まります。そしてそれらの楽器の演奏者を舞台の上にどのように配置するかを考えるのです。基本がありますので、それをもとに考えましょう。これらについても授業で教授していますが、参考になるのは、テレビのオーケストラの演奏番組です。じっくり楽器の配置や楽器の種類、数などをチェックしましょう。
 このように、自分で研究,勉強できることもいろいろあるんですよ。


『便利な機材たちE』
 コンピュータと音源を接続し、シーケンスソフトを使うことでDTMの環境を整えることができます。しかし、音源を2台、3台と増やしていくのであれば、コンピュータと音源の間に『MIDIトランスレーター』の使用、もしくはそれと『MIDIパッチベイ』との併用を考えなければいけません。MIDIの規格上、MIDI信号を直列で何台も接続することができません。ならば並列に接続しよう……というためにこれらを使うのです。
 『MIDIトランスレーター』は、MacintoshにUSBポートが付いたことにより、当初は対応した製品も少なかったのですが、現在はそのほとんどで対応化がなされています。シリアルポートやUSBポートから『MIDIトランスレーター』にケーブルをつなぎ、そこからいくつかのMIDI信号を並列に入出力させることができるのです。この『MIDIトランスレーター』には、電源を必要としないものから、MIDI対応のないレコーダーとの同期をとることのできる高価なものまで、様々な機種が販売されています。
 また『MIDIパッチベイ』とは、様々なMIDI機器の接続を簡単に切り替えられる機器で、多いもので8つのMIDIのINとOUTの信号経路をコントロールすることができます。これを使用することで、配線を変える時にいちいちケーブルの抜き差しをすることもなく、そのセッティングさえもMIDIで変更させることもできるものもあります。
 これらの機材を使用することで、増えていくMIDI機器の配線を簡単で分かりやすく、しかもトラブルも防ぐことができますので、余裕があればぜひ1台は購入して欲しい機材です。