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第11回 『DTMで陥りやすいミス@』 ― リバーブ ―
 今回は少し視点を変え、音楽制作における陥りやすいミスについてお話ししましょう。

  [ リバーブとは ]
 リバーブとは残響効果を出すための機材のことで、簡単に言えば、トンネルの中や誰もいない体育館の中、身近なところではお風呂場などで音を出した時に『ワーン』と余韻を残したように響いた音を言います(表現が難しい…)。これを機械的に作り出す機材を、正しくは『リバーブマシン』と言います。その歴史は録音技術の発展と共にあり、最初は一部屋分も必要であった大掛かりなシステムから、現在では高音質でありながら手のひらサイズにまでなってきています。もっと小さなものとして、リバーブ回路が内蔵されたマイクまであります。カラオケに行くことも日常的になってきている現在、リバーブ自体は特別な機材ではなくなってきた、とも言えるでしょう。

  [ リバーブを掛ける ]
 音楽を制作する上で、このリバーブを使わないことのほうが珍しく、必ずと言っていいほど、どんな場合でも使用しています。ただ、その掛かり具合、つまりセッティングが重要な要素を含んでおり、音楽そのものを生かすも殺すも、このセッティングひとつで決まると言っても過言ではありません。
 DTMの場合でも同様で、音源を初期設定状態で使用しても必ずリバーブ値は40となっているのです。このリバーブのセッティングですが、ではどうすれば効果的に使用することができるのでしょう。

  [ リバーブを必要としない楽器 ]
 項目名に多少の語弊はありますが、基本的には『低音楽器にはリバーブを掛けない』のです。つまり、ベースやドラムのベードラなどです。この低音部を担当している楽器にリバーブを掛け過ぎると、全体の音がフワフワ浮いた、とても落ち着きのない音として聴こえてきるのです。
 リバーブは、その設定値が同じ時、高域に対してよりも中低域に対してよく掛かるという特性があります。そのため、音楽制作に少し慣れてきた人がリバーブをセッティングする時、すべての楽器に対して同じだけのリバーブを掛ける場合を多く見かけます。あまり望ましくない傾向です。

  [ お風呂場エコー ]
 高域成分を多く含む楽器に対しては、低域成分を多く含むものに比べて、リバーブは掛かり難いので、リバーブのセッティングは、低域成分を多く含む楽器は最後に行うとよい結果をもたらします。試してみましょう。そうするうちに、自分なりのよりよいリバーブセッティングを見つけることができるようになってきます。私の場合、ベースとベードラに対しては、たいてい0から20の範囲でセッティングするのがほとんどだと思います。
 お風呂場で低い声で「あー」と声を出してみて、次に高い声で「あー」と声を出して比較するとよく分かります。お風呂場のリバーブ値は、高い音に対しても低い音に対しても同じです。さあ、実験!銭湯でやるのが効果的!
 この時の掛かりの深いリバーブのことを、一般に『お風呂場エコー』などと言うのです。あまりいいセッティングとは言えません。この言葉、少々皮肉も入っているのです。


『便利な機材たちF』
 音楽制作をしていく上で、各楽器のバランスや仕上がり具合を確認するため、その音楽をモニターすることはとても重要です。このコーナーでは以前、ヘッドホンやモニタースピーカーを取り上げ、その重要性をお話し致しました。
 だからと言って、これからスピーカーやアンプ、ヘッドホンなどを購入するには資金が足りない……という方も多いでしょう。私も、普段からCDを買いあさっており、貯金が……、ということは関係なく、モニターするためのものはあまり買い換えてもいませんし、現在は購入する予定もありません。
 それは、聴き慣らした音の出口を変えることにより、新しい機材にまた耳を慣らすまでに時間を要するからです。どう考えても音が悪い条件で音楽制作をすることは、結果としてよい音楽は生まれて来ませんが、そこそこの音質で聴くことのできるオーディオがあるのならそれで充分だったりするのです。ちなみに私が使用している音楽制作用モニタースピーカーは、普段は主に音楽を聴くために使用しております。その理由ですが、普通のCDの音質と同じような感じになるように、自分の音楽をまとめていくことができるからなのです。このことは、皆さんが思っているよりも重要なのです。モニタースピーカーの定番となっているY社のNS-10Mを使うと音がいい、なんてことはないのです。実際このスピーカーは、リスニング用としてはふさわしくありません。このスピーカーは私も所有していますが、それなりの条件を整えてあげないと力を発揮しないのです。
 私がメインで使用しているモニターシステムは、実は20年前のオーディオなのです。それもそんなにすごいものではなく、ただ聴き慣らしたシステムであるため、どんなシステムで聴くよりも正確な判断ができるのです。ちなみにそのシステムとはSU社のAU-D607Fというアンプと、同社のコンポ用のスピーカーS7001の組み合わせです。
 また、ヘッドホンでモニターすることも大切だともお話ししたこともありましたが、この主旨は、『音楽を聴くすべての条件でモニターをし、最終チェックをする』ことなのです。つまり、音楽を聴く場合、いいシステムで聴く人もいればそうでない人もいる、ヘッドホンで聴く人もいればCDラジカセで聴く人もいる、テレビでも音楽は流れてくる、などなど、あらゆる条件で音楽は聴かれます。それを考慮して音楽を制作,ミキシングしていくことで、すべての環境で自分の音楽が聴かれても、いい音で再生させることができるのです。音楽雑誌で大掛かりな録音スタジオの写真が載っていれば、それをじっくり見てください。必ずそこにはS社のCDラジカセZS-F1など、そうたいして高価ではないCDラジカセが設置されているはずです。
 私のモニター方法ですが、前述のメインモニターシステム、同じアンプとNS-10Mの組み合わせ、同メーカーのアンプAU-α607DRとAU社のスピーカーStudio1Aの組み合わせ(これは現在のリスニング用)、S社のMDR-CD900STとA社K260のヘッドホン、テレビに接続してのモニター、そしてS社のCDラジカセZS-D1と、すべてにおいてモニターをしております。
 たかがラジカセでも、実はとても重要なモニタリングシステムなのですよ。